敗戦後の経済は、食糧不足、生産の激減、大量失業者の発生、猛烈なインフレーションなど、危機的な状況に直面していた。米は不作が続き、人々はやみの食糧で辛うじて命をつなぐほかなかった。また、工業生産も軍需生産が停止して以来惨たんたる状況にあった。失業問題も深刻化し、軍隊からの復員者は七百六十万人、軍需工場等からの失業者が四百万人、海外からの引揚者約百五十万人、合計一千三百十万人の大量失業者が予想された。インフレーションは戦後処理のための日銀券の増発によって進行し、小売物価指数は七十九倍(昭和二十年~二十四年)に跳ね上がる勢いを見せた。これに対して政府は金融緊急措置令と日銀券預入令(昭和二十一年二月)を公布し、昭和二十一年二月十七日現在の預貯金を封鎖して、原則として支払いを禁止(一定限度の生活資金と事業資金を除く)し、旧円券は三月二日で通用力を失わせ、同月七日までに預貯金として預け入れなければならないとした。その預金を封鎖すると同時に新通貨(新円)を発行しインフレの進行を食い止めようとした。この時期のインフレの原因は、敗戦によって生産供給能力が制約される一方で、通貨供給が過剰になったからである。