[賠償指定工場の指定とその解除]

221 ~ 222 / 900ページ
【賠償指定工場 鈴木式織機 日本楽器 賠償指定工場の解除】
 GHQのとった経済分野における対日政策の目的は、①日本経済から物的戦争能力を除去することであり、②軍国主義的行動の発生源を日本経済から除去することであった。第一の目的に対応したものが軍需工場の解体であり、第二の目的に対応したものが、財閥解体・農地改革・労働改革であった。第一の軍需工場の解体は賠償支払いを媒介にして進められた。賠償問題とは、軍需生産用の機械設備を賠償支払いのために撤去するというものであった。GHQの指令により、賠償工場として指定されたのは全国でおよそ九百工場~一千工場を数え、静岡県では二十工場がその対象になった。遠州地方では、浅野重工業・中島飛行機・遠州織機・鈴木式織機・日本楽器・大東機工の六社が指定を受けた。そのうち鈴木式織機は、昭和二十一年八月十三日に追加指定を受けている。
 なお、静岡県から鈴木式織機高塚工場長への通知は次のようなものであった(『新編史料編五』 五産業史料41)。
 
      (写)
商第一七三六号
    昭和廿一年八月廿六日
静岡県 経済部長 ○印
静岡県 警察部長 ○印
(社)
      鈴木式織機株式会長高塚工場長殿
    賠償予定工場追加指定について
賠償予定工場に就ては一月二十日及五月二十八日付覚書に基いて夫々指定があり目下管理保全中であつたが、今般八月十三日付を以て連合軍最高司令部に於ては貴工場を賠償予定工場として追加指定した旨静岡軍政部本部より指示があつたから右了知の上工場の管理・設備・機械の保全に遺憾のない様措置されたい。
 
 日本楽器も、プロペラ、補助タンクなどを製造していたため賠償工場に指定され、プロペラ製造専用機械や金属製のプロペラなどを破壊した。しかし、昭和二十一年十月八日には、日本楽器は賠償指定工場から解除されることになった。本社工場(浜松市中沢町)では進駐軍用の高級家具や楽器を製造し、また天竜工場(浜名郡飯田村)では、復興作業に必要なベニヤ板の製造を行っていたため、指定を解除されたのである。これにより日本楽器は、本格的な会社の再建に乗り出していくことになった。