浜名湖は、その周囲を多くの町村に囲まれ、湖口は二百メートルの今切口により遠州灘と接する比較的浅い(平均水深四・八メートル)汽水湖である。浜名湖の特徴は引佐細江・猪鼻湖・松見が浦・庄内湖の四つの入江と百二十八キロメートルに及ぶ長大な湖岸線を擁し、そこに多くの河川が流入している。複雑な湖岸と流入河川からの豊富な栄養分により、魚類四百種、エビ類五十一種、カニ類九十二種、その他軟体類百二十種といった多種多様な魚介類が生息している。従って、浜名湖ではそれぞれの漁場に見合った漁業が、古来より営まれてきた。浜名湖の漁業は、それぞれの村や町の湖岸に、その漁場が限られていたため、おしなべて零細で半農半漁がほとんどであった。
戦後の漁業政策は、昭和二十三年十二月十五日に公布された水産業協同組合法によってスタートした。この法律は漁村の民主化を漁民や水産加工業者の共同組織としての協同組合が中心となって担うこと、また、生産の協同化を進めることを目的に制定された。同法により各地に漁業協同組合が設立され、浜名湖海区では十六の漁協が誕生した(表2-34参照)。浜名湖の漁業は区画漁業のかき、のり、あさりの養殖と囲目網漁業、打瀬網漁業、延縄漁業、うすめ網漁業、投網漁業、一本釣漁業、肥料藻採取などが行われていた。昭和四十年に、十七(白須賀漁協を含む)の漁業協同組合が合併して、浜名漁業協同組合になった。
佐鳴湖は二級河川である新川の中流部に位置し、満潮時には浜名湖の海水が遡上する汽水湖である。以前は、三カ所から水が湧いていたため、水がきれいで様々な魚が生息していた。しかし、天竜川にダムが造られると地下水が出なくなり水位が下がってしまったと言われている。また、佐鳴湖は市街地の近郊にあるため、市民から親しまれている湖でもあった。
佐鳴湖にはぼら、鰻、鯉、鮒などが生息していたため、昭和二十四年に入野漁業協同組合が組織化され、組合員は正組合員九十二名、準組合員百二十一名であった。佐鳴湖では、キンチャク網、地引網、刺網、四ツ手網などを使って鯉や鮒を捕り販売もしていた。また、竹筒による鰻漁も行われていた。竹の節を抜いて約一尺八寸に切り、それをとっくり縛りに縛り、竹筒に入る鰻を捕るという漁法である。
表2-34 浜名湖沿岸漁業協同組合の構成一覧(昭和29年12月31日調査)
出典:天竜東三河特定地域 浜名湖『深浅現況並びに漁業実態調査報告書』昭和29年度総合開発調査より作成
組合名 | 組合地区 | 出資総額(円) | 組合員(人) |
篠原村 | 村一円 | 121,500 | 243 |
舞阪町 | 町一円 | 2,236,000 | 676 |
新居町 | 町一円 | 903,000 | 812 |
鷲津町 | 町一円 | 209,500 | 52 |
雄踏町 | 町一円 | 508,500 | 396 |
伊佐見村 | 村一円 | 86,500 | 173 |
和地村 | 村一円 | 38,700 | 74 |
村櫛村 | 村一円 | 948,000 | 361 |
南庄内村 | 村一円 | 96,300 | 282 |
北庄内村 | 北庄内村 堀江 呉松 | 794,500 | 293 |
北庄内村湖東 | 北庄内村 白州 平松 深萩 | 341,000 | 357 |
新所村 | 村一円 | 380,000 | 91 |
入出村 | 村一円 | 876,000 | 337 |
気賀町 | 町一円 | 322,500 | 502 |
東浜名村 | 村一円 | 160,500 | 213 |
三ケ日町 | 町一円 | 116,400 | 309 |
合 計 | 町村一円=14 | 9,138,900 | 5171 |
村内一部=2 |