沼津─浜松間の電化は、当初予算を大幅に削減されたため、その実現には民間の協力が不可欠とされていた。運輸省は、静岡県に次の四項目、①事務室と係員用宿舎、ならびに倉庫の斡旋、②変電所用地ならびに電力線保守用建物、電気機関車庫、送電線路、官舎、合宿用用地の斡旋、③資材ならびに労務員用品の確保、④食糧の優先配給、について地元関係者の協力を依頼した。静岡・清水・浜松市は、電化工事に積極的に協力するために昭和二十三年四月三十日に官民一体の沼津─浜松間国鉄電化協力会(会長小林県知事)を結成して、これに応えることになった。
こうして昭和二十三年四月に沼津─静岡間、七月に静岡─浜松間でそれぞれ着工した電化工事は、架線工事、トンネルの掘り下げ工事をはじめ順調に進捗した。沼津─静岡間は二十三年十二月に工事完了、約一カ月間の試運転等を経て二十四年二月一日から正式運転を開始した。静岡─浜松間は、二十四年三月末までに工事が完了し、四月十二日から入線試験、試運転を経て同月二十一日には上り列車で坂田浜松市長ら関係者四百人が試乗して電気機関車の性能試験を行った。浜松─静岡間の所要時間は一時間三十二分であった。そして、四月二十三日から一部の旅客列車が電気運転に、五月二十日には全列車が電気運転になり、静岡―浜松間の電化が完成した。ただ、貨物列車の電気運転は六月以降順次行われることになった。なお、東京─浜松間の正式運転は、公共企業体・日本国有鉄道の発足日と同じ六月一日であった。これに伴い浜松機関区(浜松駅構内)には、十一両収容可能な電気機関車庫を建設、浜松工機部は電気機関車工場としての役割をも果たすことになった。
図2-40 「つばめ」を引いて浜名湖鉄橋を渡る蒸気機関車
図2-41 「つばめ」を引いて浜松駅を発車する電気機関車