昭和二十一年のGHQによる社会救済の原則を受けて、同年十月に生活保護法が施行された。しかし、同法は保護請求権を認めず、素行不良者や勤労意志のない者を除外するという欠格条項があった。また、昭和二十三年から方面委員を民生委員としたが、行政の補助機関とするなど公私分離が不徹底であった。浜松の民生委員は市長の補助機関となったものの、地域の実情に精通していたので、保護台帳(要保護世帯票)を持って困窮している家庭を回り要保護者の適否調査や援助物資の配分、相談業務に追われる日々であったという。補助機関ではあったものの、実質的には生活保護行政の第一線に立ち保護の要否を決定する重要な職務に従事していたのである。二十二年五月に施行された日本国憲法第二十五条の生存権に基づいた法律として昭和二十五年五月に新しい生活保護法が施行されることになり、先述の問題点は是正された。ただ、民生委員は行政の協力機関に切り替えられたため、多くの委員の活動意欲は大きく削がれていった。そこで、地域の生活困難者の転落防止と自立更生への相談指導を自主的に行う世帯更生運動を静岡県をはじめ数県が行うことになり、昭和二十七年度からは全国的な運動となっていった。これにより民生委員の活動意欲は再び高まっていった。生活保護法による浜松市の援護者の状況を表2-50で示す。
表2-50 被保護世帯人員の年齢構成
出典:『浜松市勢要覧』昭和23年版、昭和24年版より作成
注:昭和23年度を上段、24年度を下段に示す。
注:表中の数字は、資料のままとした。
年齢別 | 戦災者 | 引揚者 | 離職者 | 軍人遺族 | 在外者 留守家族 | 傷痍軍人 | 復員軍人 | 一般生活 困窮者 | 計 |
1歳~7歳 | 239 | 112 | 11 | 190 | 12 | 9 | 13 | 151 | 737 |
258 | 115 | 14 | 196 | 6 | 10 | 17 | 180 | 796 | |
8歳~13歳 | 368 | 121 | 18 | 255 | 29 | 3 | 25 | 283 | 1,102 |
376 | 124 | 20 | 260 | 14 | 6 | 30 | 497 | 1,329 | |
14歳~20歳 | 253 | 128 | 8 | 75 | 14 | 2 | 15 | 163 | 658 |
289 | 136 | 11 | 81 | 4 | 4 | 24 | 275 | 824 | |
21歳~60歳 | 1,096 | 186 | 30 | 226 | 38 | 5 | 29 | 321 | 1,931 |
1,102 | 176 | 89 | 246 | 23 | 11 | 34 | 520 | 2,201 | |
60歳以上 | 139 | 107 | 6 | 43 | 13 | 7 | 12 | 129 | 456 |
185 | 110 | 19 | 52 | 7 | 3 | 13 | 269 | 658 | |
計 | 2,095 | 654 | 73 | 789 | 106 | 26 | 94 | 1,047 | 4,884 |
2,210 | 661 | 153 | 835 | 56 | 34 | 118 | 1,741 | 5,808 |
注:昭和23年度を上段、24年度を下段に示す。
注:表中の数字は、資料のままとした。
この表から、生活保護を受ける援護者のなかで、六十歳以上の高齢者は全体の一割ほどであること、十三歳以下の子どもが四割弱いたことが分かる。次にこれらの援護者の年次変化を表2-51に示した。昭和二十五年度の統計では、一般生活困窮者が二割弱、離職者が一割五分強であり、ほかの約六割五分が戦争・戦災に直接関係した要因による被保護世帯人員であることが分かる。
表2-51 被保護世帯人員の年次変化
出典:『浜松市勢要覧』昭和23年〜26年版より作成
年度 | 戦災者 | 引揚者 | 離職者 | 軍人遺族 | 在外者 留守家族 | 傷痍軍人 | 復員軍人 | 一般生活 困窮者 | 計 |
23年度 | 2,095 | 654 | 73 | 789 | 106 | 26 | 94 | 1,047 | 4,884 |
24年度 | 2,210 | 661 | 153 | 835 | 56 | 34 | 118 | 1,741 | 5,808 |
25年度 | 1,811 | 215 | 699 | 643 | 149 | 37 | 72 | 806 | 4,432 |
26年度 | 1,125 | 209 | 594 | 491 | 94 | 63 | 164 | 1,198 | 3,938 |