他方、戦災者や引揚者のための臨時の診療所も開設されている(上村家文書「重要通知書綴」、『新編史料編五』 八医療 史料12)。この史料は浜松市長から町内会長あてへの昭和二十年十二月四日付の通達である。戦災によって医療施設が壊滅状態に近くなったなかでの、戦災者・引揚者に対して、罹災証明書持参の上で外科・内科の無料診療を受けられることを周知させるようにという通達である。ただし、その期間は十二月五日から十九日までの半月間であり、施療場所は追分国民学校である。もっとも、診療に当たる医師等は恩賜財団戦災援護会静岡県支部から派遣されたものであろう。なお戦災援護会が恩賜財団を称するのは昭和二十年三月の東京大空襲後、四月十七日に天皇下賜金一千万円が交付されたからで、戦後に継承され、右の追分国民学校に臨時の無料診療所が開設されたものである。