【カキ中毒 アサリ中毒】
昭和二十八年三月十五日号の『広報はままつ』には「貝類による中毒」の標題で、潮干狩りの季節到来を迎えるに当たって、戦中戦後に発生した貝中毒の歴史を振り返った啓蒙記事が出ている。
浜名湖のカキ、アサリ中毒は、昭和十七年三月から十八年、二十四年、二十五年と四年間の三月から四月に四百五十三名の中毒者が出来、百十二名の痛ましい死亡者を出しました。これは浜名湖だけに限つたものではなく横須賀市にもあり、豊橋市でもアメリカでも見られたことであります。これら貝類による中毒の原因については、多くの学者が長年の研究にもかゝわらず、残念ながらまだはつきりとしていません。(中略)毒性の原因が貝にある病原性微生物であるという説や貝類の疾病にもとづくものであるという説は、事実に反するものとして否定されました。その結果原因物質の追求は、貝類が摂取する海水中の物質にまでせばめられ毒物が海水中のプランクトンの中及びプランクトンの抽出物から見出され、それが、プランクトンから含まれているアルカロイドであることが分りました。浜名湖の場合も或る場所と時期に限られたもので、赤潮との関係が疑われていますが、赤潮はプランクトンと関係はあるが、貝の有毒化がどうして起るか不明ですけれども…
以上が貝中毒事件の概要であるが、『新居町史』第二巻 通史編下(平成二年三月刊)と『舞阪町史』下巻(平成十一年三月刊)は、多数の中毒被害者と死亡者を出したこともあって、事件の詳細な原因究明の経過と、その時点において原因不明であったことを叙述している。