[孔版による文集作り]

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【謄写版印刷】
 第一項で見たように、敗戦を機に浜松地方でも活発な文芸活動が展開され、様々な文芸誌等が現れ消えていったが、その多くは孔版によるものであった。謄写版印刷(俗にガリ版刷り)とも言われ、ガリ版と呼ばれる鉄製のやすりの板の上に、ろう引きの原紙をあてがい、鉄筆で文字や絵を書いて印刷する方法である。活版印刷に比べて経費が安くて済むので、個人や職場で、またプロの筆工をおく印刷屋でも行われた。浜松市立中央図書館には、当時の謄写版による出版物が幾つか残されている。前述のように、後藤一夫による個人誌『えご』も謄写版によるものであったが、このほか昭和三十年代前半のものとして、富安風生系の俳句グループの会誌『ざざんざ』(昭和二十四年~)、『麦』(昭和二十七年~)、浜松北高校の文芸グループによる文芸誌『朱欒』(昭和三十一年~)、詩を中心とする雑誌『銀』(昭和三十二年~)などである。このような出版物は、昭和三十年代の後半も盛んで、四十年代前半ごろまで見られる。これがやがて、タイプライター、謄写ファックス、ワープロを経て平成のパソコン入力による文書作成の時代へと移り変わっていく。