[図書館のレコードコンサート]

445 ~ 445 / 900ページ
【レコードコンサート 吉野茂】
 図書館は、文化センターとして市民の文化活動の向上、発展のための様々な工夫や努力をしていた。特筆すべき企画としてレコードコンサートの開催がある。その第一回は、開館からわずか二十日足らずが過ぎた昭和二十五年十二月九日のことであった。開催までのいきさつについては「浜松の図書館史」29・30に詳述されており(『新編史料編五』 九文学 史料41参照)、それによれば、企画実現の背景には、国鉄浜松工場に勤務していたレコードの愛好家吉野茂の全面的な協力があった。従って、コンサートは国鉄浜松工場クラブレコード部との共催であった。
 当日の図書館の日誌によれば、入場者は百二十五名であった。レコードコンサートは、しばらく隔週の土曜日に開催され、毎回百二十~百四十名の参加があり、図書館の二階はいつも満員の状態であった。翌二十六年の二月から月二回の開催となり、臨時にも開かれるようになった。こうして、浜松では前記の吉野をはじめレコード店や多くの人々の提供したレコードにより、このコンサートは続けられ発展していった。敗戦後、数年たったばかりの、まだ戦争の傷跡が各所に残り、生活も苦しかったころの多くの市民にとって、数多くの名曲を聴くことが出来たことは、今日のように音楽の溢れているなかで聴くよりも数倍の喜びがあったものと想像される。