【素人劇団 演劇】
演劇関係について見ると、昭和二十年代前半の特徴は素人劇団による演劇が非常に盛んであったことである。当時の状況や雰囲気を伝える好史料として、浜松で出されていた『青年公論』の昭和二十三年新年号所載の「労働文化祭芸能大会 演劇批評」(筆者・成島成夫)がある(『新編史料編五』 九文学 史料27)。これによると、この大会に参加した労組の数は日楽本社労組、浜松工機部労組など九つにも上っており、素人劇団による演劇がいかに盛んであったかを伝えている。この批評文からは、そこで演じられた作品の半数以上が、何らかの形で戦争に取材したものであることが知られ、時代を思わせられる。評者は一つ一つの作品について丁寧に、かつ手厳しく批評した上で、まとめの部分で次のように記しており、当時のこうした素人劇団による演劇界の、真面目で厳しい姿勢をうかがうことが出来る。
組織労働者諸君の取上げる脚本が、単なる人情劇であつたり、安易で、センチメンタルなお涙頂戴式のものであつては、ならないと思ふ。所謂軽演劇式のものであつても、作者の世界観、社会観、人生観が芸術的な手法に依つて、明瞭に主張されておるやうなものであつて欲しい。
こうした素人劇団による演劇活動は、青年団においても盛んで、村まつりの余興などで活躍した。しかし、映画の人気の高まり等によって次第に姿を消していったようである。