これまで浜松市消防署は浜松中央警察署の西に隣接し、戦後のバラック建築であった。また、消防本部は転々と間借り生活を余儀なくされていた。浜松市はこれを解消すべく、市役所の増築部分に二階建ての庁舎を建設することにしたが、市町村合併による事務量の増加で四階建てとし、その一・二階を消防本部と浜松市消防署で使うことにした。昭和三十年(一九五五)九月三日に新しい消防庁舎が完成した。市役所の建物に出来た新庁舎には新型の消防自動車がずらりと並び、市民に安心感を与えるとともに、警察署に隣接していた庁舎と決別したこともあり、自治体消防の存在を改めて認識させた。九月三日の落成祝賀式当日、新庁舎は紙テープや造花で装飾が施され、盛大な式典が催された。祝賀行事には内藤清五指揮の東京消防庁音楽隊三十人も参加、駅前から六百人の消防団員と共に行進曲を吹奏しながら市中をパレード、市民はこれを紙吹雪や紙テープを浴びせて歓迎した。新庁舎前では消防署の誇る飛龍号などのタンク車数台から秋空高く放水も行われ、集まった一万数千人の市民を喜ばせた。この祝賀行事の模様を『遠州新聞』は「…市民の目前に〝消防浜松〟の威容を遺憾なく示した」と報じた。
図3-9 浜松市消防署(浜松市役所の一角に設置)