【宗教法人令 宗教法人】
戦後のGHQ指令によって昭和二十年十二月二十八日、宗教法人令が施行されるに伴い、宗教団体法は廃止された。それによって宗教団体は所定の形式に則って届けさえすれば宗教法人になることが出来た。
【宗教法人法】
昭和二十六年四月三日に至り宗教法人令を廃止し、宗教法人法を公布・施行した。これは宗教団体における業務・事業の運営に資するべく法人格を与えることを目的とした法律(本則十章、付則二十八項)である。公告・認証・責任役員の三つの制度を骨子とする構成である(松本久史執筆『神道史大辞典』参照)。
【法林寺】
法林寺の場合を通して宗教法人法に基づき法人格を取得する意図と、いかなる書類を提出するのか、その過程を見ることにする。まず住職吉沢純道が昭和二十七年七月八日付で、宗教法人法林寺を設立したことを「信者その他利害関係人各位」に対して「公告」した。昭和二十七年七月十八日付で申請者は公告の掲示場所・掲示場の数・掲示期間の三つを記し、これが相違ないことを総代三名が確認したという旨の連署を備えた「設立公告証明書」を作成している。他方、同年七月十八日付で「宗教法人規則認証申請」を静岡県知事に提出するに当たり、「法林寺が宗教団体であることを証する書類」として「宗教法人『法林寺』規則」を作成した。この書式は浄土宗としての統一された文言に、法林寺の名称を墨書追加するというもの(第一章総則・第二章役員その他の機関・第三章財務・第四章事業・第五章補則)であった。このうちで注目されるのは法林寺としての独自性をうたう第四章事業の箇条で、この「事業」の文字に続けて「公益事業」という字句を添えている点である。この文章には、「第三十五条 この法人は、済生利民の教旨に基き浜松第一幼稚園を経営する」とある。この条文の意図するところは宗教法人としての教化活動のほかに、これを支える経済的基盤を確立させるところにあろう。
戦後のGHQの経済改革によって多くの寺社の所有地は農地改革の対象となり、不在地主としての経済力と社会的威信を失っている。そのような状況を補うべく、先述のように寺社では境内に保育園や幼稚園を設け、はたまた駐車場などを経営する例が多い。法林寺の場合はこの箇条が根拠である。
なお、法林寺の宗教法人規則の静岡県知事名による「認証」は昭和二十九年二月二十五日付であった。次いで「昭和二十九年参月拾日」付で静岡地方法務局浜松支局において法林寺の宗教法人登記が完了した。それによれば、法林寺の包括団体の名称は浄土宗であり、宗教法人である。基本財産は金六百九十万三千円。目的(公益事業等の種類を含む)として、「この法人は、阿弥陀仏を本尊とし、浄土三部経を所依の経典として、浄土宗の教義をひろめ、儀式行事を行い、信者を教化育成し、その他この法人を護持発展させるための業務及び事業を行うことを目的とする」と記している。責任役員は吉沢純道・武智孝英・神谷政雄の三名を挙げ、代表役員は吉沢純道としている。