[浜松北保健所]

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 浜松市では昭和二十九年以来の市町村合併に伴い市域が拡大するにつれて、伝染病に罹患した患者の隔離と治療、また予防施策は県政・市政における大きな課題となっていた。浜松市は市町村合併を契機として行政機構を改正し、昭和三十一年十月に厚生部を新たに起こした。ここに福祉事務所・労政課・市民課・衛生課を置き、衛生課に清掃係と衛生係を置いている。組織拡大に伴う縦割り行政が持つ相互連絡の停滞を避けるためと言う。
 
【浜松北保健所】
 これは県と市との関係でも言えることである。県の衛生行政の最前線である保健所は、浜松地域(浜松市と浜名郡の浜名湖以東の一市二十九町村)には一カ所のみであり、四十万人を対象にしていた。対象地域の人口の増加に伴い保健所の指導内容の徹底化のためには、あまりにも広域過ぎるようになったので、昭和三十三年八月一日から市内笠井町に浜松北保健所が新設され業務を開始している。
 この場所は旧笠井町の伝染病院跡で、県議会では保健所建設候補地に関して、浜松市と浜名郡の選出県議との調整を経ていた(『静岡新聞』昭和三十二年十月六日付)。浜松北保健所は都田・三方原・積志・長上・笠井の五地区と浜名郡浜北町の約九万人を対象にするものである(『広報はままつ』昭和三十三年八月五日号)。
 
【保健所の仕事】
 保健所の仕事は伝染病対策、結核対策、家族計画の指導、環境衛生の向上、以上の四点が大項目である。これに細目があり、住民の日常生活を支えるものとなっている。伝染病対策は敗戦直後以来の継続する社会的な重要施策であり、集団発生防止、家族感染防止に全力投球されているものである。従って、これを支える簡易水道・給食などの衛生検査は徹底されるわけである。結核は戦前には国民病と言われたが、戦後には死亡率は下がったものの依然として根絶されていないので、その対策として予防接種を積極的に行っているわけであり、他方、治療新薬の開発が進行している時点である。家族計画の指導は戦後の全く新しい観点の政策である。家族の経済能力や母性の健康を考慮し、受胎調節による計画的出産を指導する。保健所に所属し、国家試験免許を有する保健婦や指導員が指導するものである。環境衛生の向上は伝染病発生の原因を除去する対策であり、狂犬病・性病・栄養指導に至るまで、幅広く住民の安全を促進する仕事を行い、かつ、右の衛生状況を統計的に把握するための調査研究も行っている。
 
表3-40 主要死因別死亡数
浜松保健所調
死 因 別昭和27年
死亡数
昭和28年
死亡数
昭和29年
死亡数
呼吸器系の結核94138124
その他の結核263122
梅毒及びその続発症9107
法定伝染病372238
届出伝染病91710
その他の伝染病及び寄生虫病11810
新生物(ガン)133117161
アレルギー性疾患内分泌系の
疾患物質代謝及栄養の疾患
544
血液及び造血器の疾患53
神経系及び感覚器の疾患213290356
循環器系の疾患110156178
呼吸器系の疾患96158127
消化器系の疾患11087133
泌尿器系の疾患463870
分娩並びに妊娠分娩及び産褥の合併症5113
先天奇形112
新生児の主要疾患675377
症状老衰及び診断不適当の状態127173177
その他のすべての疾患121213136
不慮の事故及び中毒393457
自殺及び自傷291431
他殺33
総 数1,2961,5641,749
出典:『浜松市勢要覧』昭和30年版より作成