[特効薬と医療技術]

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【抗生物質】
 新薬として様々な抗生物質の薬剤が開発されたが、赤痢治療対策上で効果があるクロロマイセチンを使用した際の治療費負担が問題視されている。伝染病罹患を理由に浜松市立病院へ強制入院に遭い、浜松市立病院条例第三条「料金」の「特殊薬価」の項(高貴薬は患者負担という原則)が適用された場合、健康保険を利用できない人々には負担困難であると問題視されている。それにより入院拒否の挙げ句患者の素人療法が赤痢菌氾濫をもたらしかねないと、保健所は頭を悩ませているという(『静岡新聞』昭和二十九年六月九日付)。
 
【素人療法】
 他方、素人療法を可能にさせた条件の一つは、抗生物質が一般化して購入しやすくなったことがある。客が購入した薬剤を薬剤師に注射させるという医療行為が流行しているという。浜松保健所は医師法違反の面から監視と調査を行うとしている(『静岡新聞』昭和二十八年一月十一日付)。
 右の市立病院条例第三条に関しては、保健所は市立病院条例にいう自己負担の規定を暗に批判する談話を発表し、「特殊薬は国家補助の対照(象)」「県でも極力徴収しないようにとの方針」「他町村ではほとんど全額が町村負担」と述べて、赤痢防止を前面に出している(『静岡新聞』昭和二十九年六月九日付)。