【『麦』】
文芸誌『麦』創刊号の刊行は昭和二十七年(一九五二)一月十日。編集人菅沼五十一、発起人稲勝正弘、発行所浜松ペンの会。B5判(3号からはA5判)、孔版印刷ながら本文六十頁の相当に充実した雑誌である。創刊号収載作品は、小説・戯曲・評論・雑感・詩で、巻頭の「造形美について」は、彫刻家水野欣三郎の本格的な美術論。このほか第二章に既出の後藤一夫の戯曲「流れ」、気賀百合子と牧開治の小品、後の浜松市長栗原勝の「建築ノート」等があり、当時の浜松地方の文芸界の様相と雰囲気をよく伝えている。作者名として大場嘉次郎、菅沼康、折笠茂の名が見えるがペンネームであろう。