『浜松市民文芸』

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 昭和三十一年、戦後の浜松の文芸活動の向上に大きく寄与した二つの文芸誌『浜松市民文芸』(三月二十五日)と『労苑』(四月三十日)が相次いで創刊された。それぞれ浜松市教育委員会社会教育課と総務部労政課から発行されている。
 『浜松市民文芸』は、第一集の「編集を終えて」によれば、浜松市芸術祭の一部門として市民から文芸作品を募集し優秀作品を選んで冊子にまとめようというのが出発点であった。主催者側には、成功するかどうか不安もあったようであるが、多数の応募作品があり滑り出しは順調であった。第一集のジャンルと選者は次の通り。
 
  評論=鈴木実(静大教育学部)、松田信夫(静大工学部)
  創作=前川清太郎(静大教育学部)、勝見次郎(医師)、気賀百合子(浜松商科短大図書館)、前田義夫(中部日本新聞社)
  詩 =後藤一夫(浜松市教育委員会)、菅沼五十一(静岡文芸選者)、小池鈴江(中部日本詩人連盟)
  短歌=柳本満之助(医師)、安中新平(浜松市教育委員会)
  俳句=内田六郎(医師)、相生垣瓜人(馬酔木同人)
 
 
【吉田知子】
 このうち勝見は藤枝静男、柳本は柳本城西である。表紙絵は、山内泉の手になる西浦田楽の能面のスケッチ、カットは山内泉と山岡三男であった。後の芥川賞作家・吉田知子の作品が市民文芸賞を受賞するのは第七集(「膨脹」)と第十一集(「冬」)である。なお、部門として、この後随筆と川柳が加えられ、ずっと後になって児童文学が加えられることになる。当誌の発行は、現在もなお続けられている。

図3-81 『浜松市民文芸』第一集