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このたび『浜松市史』五(通史編)を刊行する運びとなりました。本書はこれまで刊行しました通史編や『浜松市史』新編史料編(六巻)の成果、また、多くの人々の研究なども参考にして、昭和三十年代中ごろから平成十六年までの市域における歩みを学問的な水準を保ちながらもできるだけ分かりやすく記述するように努めました。
本書が取り扱う時期は高度経済成長期から石油ショック後の低成長期、また、バブルの時代から平成不況、そしてその克服と目まぐるしく経済が変転した時代でした。高度経済成長期には多くの産業人の努力により輸送機械や楽器、繊維の三大産業は急速な発展を遂げ、オートバイや楽器は世界の頂点に立つことができました。この躍進を支えたのは東海道新幹線や東名高速道路、三方原用水事業など、多くの事業をなし遂げる際に発揮された市民の英知と強大なエネルギーがあったことを忘れてはいけません。このような中でも、市民は教育に文化に、そして福祉の面でも世界の水準に追い付くべく努力を重ねてまいりました。これに続く時代には物質的な恵まれた環境を享受する中で、精神的な豊かさ、さらに、高度情報化、国際化など新しい時代に対応できるようさまざまな取り組みがなされました。浜松地域テクノポリスの建設はその一例です。
こうした市民の努力により、浜松市は中核市からさらに政令指定都市へと発展し、今日見るように国際的な都市にまで発展してまいりました。ただ、いつの世にも解決すべき課題は出てくるものです。
日本は今や超高齢化と人口減少の時代を迎えましたが、浜松市もその例外ではありません。浜松市の将来推計人口では、三十年後には今より十四万人の人口減少を予測しています。このような状況を受けて、浜松市は平成二十七年度から新総合計画に基づく市政の運営を始めております。どんな厳しい状況下にあっても、豊かな地域社会の実現を目標に努めてまいりますが、そのためにはこれまで先人がさまざまな困難にもめげず、たゆまぬ努力をされて今日の浜松を築いてきた歴史に学んでいかなければなりません。このような意味でも『浜松市史』五の刊行は意義あるものと思います。この『浜松市史』五が市民の皆様をはじめ、多くの方々に読み継がれ活用されて、浜松市の発展と地域文化の向上に役立つことを願うと同時に、新たな調査や研究が始まることも期待いたします。
十九年間という長い期間を要した市史編さん事業ではありますが、貴重な史料をご提供くださいました多くの所蔵者や編著者の皆様、ご協力をいただいた関係機関、及び調査・執筆・編さんに当たられた皆様に対しまして心から感謝申し上げます。
 
 
   平成二十八年三月
              浜松市長  鈴 木 康 友