【請願 陳情 要望】
地方自治においては住民は選挙権、被選挙権をはじめ、条例の制定や改廃、市長や議員などの解職を求める直接請求権を持っている。直接請求権は一定以上の署名が必要であり、手続きには時間がかかるので浜松市ではあまり行われなかった。これに代わって市議会への請願や陳情、要望の制度がしばしば使われた。このうち、請願は議員の紹介により、記名押印された文書を市議会議長に提出することになっている。浜松市議会の議事録によると、昭和四十年からの同四十一年までの請願とその採択状況は次の通りである。これらにより市民の生活の状況や願いなどが分かるが、革新系の団体や労働組合からの請願の多くは不採択となっていた。
昭和四十年 バス料金値上げ反対に関する請願 不採択
公共料金・諸物価の抑制に関する請願 不採択
税制改善要求に関する請願 不採択
「労働環境整備都市」確立に関する請願 不採択
在外私有財産補償促進についての請願 採 択
昭和四十一年 地方公営企業確立のための請願 不採択
最低賃金制の即時確立に関する請願 不採択
諸物価の上昇を抑制し、市民生活を安定させる請願 継続審査
野口竜禅寺線ガード(東ガード)整備に関する請願 継続審査
一方、陳情は紹介議員がなくても出来るもので、文書により議長に提出することになっていた。これは請願に比べて極めて多く、一つのことをなし遂げるには陳情がものをいうといった状況であった。『浜松市議会報』によると、昭和四十一年に行われた市民各層の陳情件目のうち採択されたものは百五十七、継続審査は十六、不採択は一となっている。採択のうち多いものは道路の舗装や改修、学校の校舎の増改築、体育館・プールの建設、信号機の設置、消防車購入への補助、建物の払い下げなどであった。
一方、市議会は国や県、市の執行機関に対し、重要な課題について審議を行い、意見や決議、宣言などを行っていた。これらのうち、昭和四十年と同四十一年に発議されたもののうち主なものを挙げてみる。
昭和四十年 公営交通事業の料金適正化抑制による財政再建方要望に関する意見書
諸物価の安定政策の推進方に関する意見書
税制改善に関する意見書
沖縄の祖国復帰に関する要請決議
引揚者の在外私有財産補償処理促進についての意見書
野犬対策の推進方に関する意見書
労働環境整備都市宣言
戦災死没者遺族並びに戦災傷病者の援護措置確立に関する要請決議
暴力追放に関する決議
昭和四十一年 県立高等学校新設並びに分校独立に関する意見書
青少年を守り、非行化を防止する決議
浜松西インターチェンジ設置に関する意見書