昭和四十二年、天竜東三河特定地域総合開発計画の一環として、国営天竜川下流用水事業が着手された。これは天竜川下流地域の農業用水・上水道・工業用水を確保するのが目的で計画された。天竜川下流地域において①ダムの建設や砂利の採取等により天竜川の河床が低下し取水が不安定になってきたこと、②伏流水の大量利用により地下水の水位の低下と塩水化を進行させたこと、③用排兼用水路が都市排水によって汚染される事態が起きてきたことなどのため、水源の転換(船明ダムへ変更)と用排水路の分離が必要になった。このため、天竜川両岸の田畑一万二千二百三十五ヘクタールを受益地として国営およびこれに付帯する県営・団体営事業によって、天竜川下流地区土地改良事業を実施することになった。浜松市を含む右岸地区の受益面積は四千六百七十九ヘクタール(表2―36)で、国営事業として新浜名幹線水路等を約二十七キロメートルにわたって整備し、県営事業としては国営幹線の末端・支線水路を整備し、団体営事業としては灌漑(かんがい)排水施設と農用地の整備を行った。
表2―36 天竜川下流地区土地改良事業による農業の受益面積(右岸地域)
受益面積 | 備考 | |||
田(ha) | 畑(ha) | 計(ha) | ||
浜松市 | 2968.4 | 215.0 | 3183.4 | 用水量 23.6m2/sec |
浜北市 | 427.3 | 1010.0 | 1437.3 | |
可美村 | 58.3 | - | 58.3 | |
計 | 3454.0 | 1225.0 | 4679.0 |