[国鉄による最終案の提示]

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 昭和三十六年五月十一日、国鉄新幹線静岡工事局の坂本局長は記者会見を行い、浜松通過コースに関する新たな方針を示した。それは、南北両線案は白紙に戻し、それに代わる案として現東海道線の高架化を考慮して最終コースを検討するというものであった。こうして、七月二十一日に国鉄の最終案がようやく市側に示された。
 
【坂本私案】
 これがいわゆる坂本私案と言われるもので、市が要望してきた北線とは一部コースの経過地点が異なるが、浜松駅に新幹線の駅を近付けるという市側の希望がほぼ満たされたものであった。また、同案には現東海道線の高架化計画も織り込まれ、移転家屋数も三百戸前後と比較的少ない数に止められた。
 翌二十二日、市は市議会の新幹線特別委員会および全員協議会を開いて協議した結果、全会一致でこの案の受入れを了承、二十四日には期成同盟会総会が開催されて同じく同案を了承した。また、実現のため全力を挙げて関係市民の協力を求めていくことが確認された。
 こうして約二年間にわたる新幹線通過コース問題にようやく終止符が打たれることになった。なお、市では国鉄新幹線事業に協力するため、二十七日に市役所内に日本国有鉄道新幹線事業浜松市協力本部事務局を設置した。また、市は路線関係者に対する市主催の説明会を行うとともに同意書の提出を求めた。
 
【コースの正式決定】
 国鉄新幹線浜松コースと浜松駅の位置(東海道本線浜松駅の南約八十メートル)は、坂本私案(静岡工事局案)に正式決定され、十月十九日に国鉄から発表された。路線のコースと駅の位置は、言うまでもなく市がそれまで主張してきたものにほぼ近いものであった。
 
表2-37 南線案、北線案、坂本私案の比較
南線案(国鉄案)
市南部農業地帯コース。人家も少なく地価も安いなどの利点。地盤が比
較的悪い、路線延長が長いなどの欠点。また、土盛り路線のため市南部
が両断されて南北交通、地域開発などに弊害。総延長13.6キロメート
ル、すべて土盛り路線、移転家屋140戸、駅舎予定地は可美村東若林
付近。総工費60億円。

北線案(市案)
現駅に最も寄り添ったコース。総延長13.5キロメートル、うち東部中学校
から成子町切通しまでの2.5キロが高架構造。移転家屋570戸、駅舎は国
鉄浜松駅の南、総工費80億円。

坂本私案
現駅南ロのやや南に新駅。新駅から成子町を通り、その後一級国道と立
体交差、その後、東若林地内で現線と交差するコース。市内の総延長
13.5キロ、うち東部中学校から森田町までの2.4キロが高架構造。移転家
屋310戸、駅舎は南口からでは80メートル位の地点、総工費60億円。
出典:『静岡新聞』昭和35年8月14日、同36年2月3日、7月23日・31日、10月20日付、
   『広報はままつ』昭和35年8月5日号、同36年11月6日号等より作成