[伝統行事の変貌]

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【鴨江観音】
 浜松地方で、浜松まつりに次いで多くの人出があった伝統行事は鴨江観音の春と秋の各一週間の彼岸会であった。また、伝馬町交差点から鴨江観音までの約五百メートルの沿道の両側と境内などには瀬戸物屋やおもちゃ屋、食べ物屋などの露店がひしめきあっていた。静岡鉄道管理局は鴨江観音の縁日で菊川と豊橋の間で臨時列車増発を行っていた。昭和三十年代の半ばが転換点であった。参拝者数は数十万人から十数万人に、露店は四百~三百軒から二百~百軒に、それぞれ減少していった。また、サーカス小屋も姿を消していった。参拝者の多くは、植木市や耕うん機の展示が示すように近郷近在の農業に従事する住民であった。減少の理由としては、休日に近隣の観光地への遠出や世代の移り変わりが考えられていた(『静岡新聞』昭和三十五年九月二十八日付)。