[小児科医の趨勢]

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【小児科医の保険診療】
 戦後のベビーブームによって右のように大病院の小児科開設や小児科を標榜する小児科が漸増する事になるが、他方では保険診療の導入によって小児科自体の存立が危うくなってきた。
 小児科は他の診察科と違い、稲留研三は現今の「医療経済の中では、小児科医という冷や飯食い」と嘆じている。この時点におけるその理由の一つには保険診療における報酬点数制の根拠が物量主義にあって、技術料に対する思想が弱い点であろう。小児に使用する薬剤・注射量は成人に比して圧倒的に少量であり、点数も低く、安価になるからにほかならない。また、子供の急病に対処する親に著しい傾向は、その性急さにあるが、早朝深夜を問わない電話による相談に対して、相談料が点数化されていない事などもある。
 小児科医師の特徴として人間味が重視されるのは、頑是(がんぜ)ない子供の診断には内科・外科・耳鼻咽喉科などあらゆる専門性を越えた判断が要求されるという事によろう。平成の年代に入ると少子化社会の出現を受けて不採算性が問題視され、病院における小児科閉鎖問題が進行している。また医学生が小児科を志向しない傾向が著しくなるのである。