浜松で発行され、その後息長く続いた、あるいは現に続いている総合雑誌としては、『東海展望』と『浜松百撰』がある。二誌の創刊については、既に『浜松市史』四において取り上げた。『浜松百撰』は現在も浜松の文化・経済・産業・その他各方面の多彩な話題を取り上げて地域に紹介し続け、タウン誌として確かな存在感を示し続けている。
【『東海展望』 久保田一】
『東海展望』のその後を見る。昭和三十一年三月号から、発行人兼編集人が久保田一に代わり、以後同五十九年七月まで約三十年間その立場にあった。この間の昭和四十五年七月、発行所が自治タイムス社から株式会社東海展望に代わっているが、これは社名の変更によるものと思われる。昭和五十九年八月から、発行人松本元二、編集人神谷昌志となりこれが翌年四月まで続くが、この四月号をもって神谷は『東海展望』を離れたと見られる(五月号は、発行人・編集人共に松本元二となり、六月号から十一月号までは編集人に松田和夫が加わる)。神谷の去った後、昭和六十年五月号から同誌の紙面は、文化面をはじめ急速に色あせてゆくのが感じられる。同誌は浜松市立図書館に昭和六十二年八月号までが保存されていて、この八月号に終刊の辞はないが、九月に「月刊『東海展望』の休刊のお詫び」の知らせが各方面に配布され、それには昭和六十二年九月号から休刊となったことが記されていた。同誌は、歴史・文化をはじめ郷土を総合的に知る上に有力な手掛かりをを与えてくれる情報源として廃刊を惜しむ声は多かった。浜松市立中央図書館に保存されている四百冊に及ぶバックナンバーは、現在も郷土史の貴重な資料として多くの人々に利用されている。