【水野欣三郎】
彫刻家水野欣三郎の、戦後の活動については、『浜松市史』四において、各施設のための作品制作のほか、市展・労働美術展の審査員を務めたこと、二紀会同人として活躍したことなどを紹介した。その後の水野の活動について見る。
平成四年、浜松市美術館において水野欣三郎展が開かれた際作成された図録『思索する彫刻家 水野欣三郎展』巻末の年譜によれば、作品制作としては、まず二紀会同人として昭和三十六年(第15回)以降毎年欠かすことなく二紀展に出品し旺盛な作家活動を示している。その他の作品で、浜松市と関係の深い作品としては次のようなものがある。
・やわらぎ像(浜松市動物園、昭和四十年)
・愛郷(浜松五社公園、昭和四十一年)
・意相(静岡大学工学部図書館、昭和四十九年)
・戦没者慰霊像(浜松城公園、昭和五十四年)
・若き日の徳川家康公像(浜松城公園、昭和五十六年)
・賀茂真淵像(浜松市立賀茂真淵記念館、昭和五十九年)
・空華(Uホール、昭和五十九年)
・青年の像(県立浜松工業高等学校、昭和六十年)
この間、昭和五十年二紀会監事、同五十九年には二紀会評議員となっている。浜松市関係では、浜松市文化財審議会委員(昭和三十五年)、浜松市美術館協議会委員(同四十六年)、浜松市伊場遺跡整備委員会委員(同四十九年)を務め、これらの功績により昭和五十四年浜松市市勢功労者として表彰され、平成元年には勲六等単光旭日章を授与されている。こうして、平成四年浜松市美術館において、前記水野欣三郎展が開催された。亡くなったのは平成九年三月。享年九十三であった。
なお、水野は昭和二十七年、半田山竜泉寺(曹洞宗、半田町)の住職井上義衍老師と出会って以来、深く禅と関わっており、彼の芸術を理解する上にこの点を見逃すことは出来ないであろう。彼の著書としては『禅と芸術の接点』(昭和五十八年、近藤出版社刊)がある。