[『浜松市史』通史編の刊行]

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【市史再編 通史編】
 浜松市が『浜松市史』全を刊行したのは大正十五年十月のことである。浜松市として初めての市史編さんであった。その後、数回にわたって市史再編の動きがあったが刊行には至らなかった。約三十年を経た昭和三十年になってようやくその動きは本格化する。渥美静一、渥美実の二名に事業が委嘱され、まず史料保存の意味から史料編の編さん事業が始められた。顧問として浜松出身の東大教授・東大史料編纂所長坂本太郎が就任した。こうして、昭和三十二年から三十八年にかけて史料編全六冊が刊行された。内容としては、江戸時代の浜松宿、浜松藩関係の史料が中心でそれに浜松県関係の史料が添えられた形となった。この史料編刊行の後を受けて、通史編の編さんが計画され顧問兼監修には坂本太郎が引き続き就任した。
 全三巻のうちの第一巻が刊行されたのは昭和四十三年三月のことである。内容は自然環境編・原始編・古代編・中世編の四編から成る。「あとがき」は付けられていない。年表と索引を含め七百六頁。付録として浜松市域図(国土地理院発行の五万分の一地形図に基づく)が添えられた。第二巻の刊行は、昭和四十六年三月。近世編として全一巻である。内容は次の七章から成る。「まえがき」と「あとがき」は付けられていない。
  第一章 近世総説
  第二章 近世初頭の浜松と徳川家康
  第三章 浜松城下町の形成
  第四章 浜松藩の確立
  第五章 交通・産業経済の発展と町や村の生活 
  第六章 藩政の動揺と民衆の動向
  第七章 文化の興隆
年表と索引を含め六百七十三頁。付録として「御家中配列図」の写真と「青山御領分絵図」の写真、拡大模写図、解説が添えられている。第三巻の刊行は、昭和五十五年三月。近代編として全一巻である。内容は次の五章から成る。「まえがき」と「あとがき」はない。
  第一章 近代総説
  第二章 近代浜松の基礎
  第三章 町制の施行と浜松町の発展
  第四章 市制の施行と進む近代化
  第五章 太平洋戦争と浜松
凡例中に「浜松市史はいちおう本巻をもって終了といたします。」という一文がある。年表と索引を含めて七百二十九頁。付録として「現在の浜松市中心街」の写真(カラー)と「大正前後浜松中心街図」が添えられた。
 こうして浜松市史の編さん事業は一区切りとなった。ただし、史料編は明治のごく初期の浜松県の記録まで、通史編は戦後の浜松には触れられていないという不備な形で終わったため、続編の刊行の必要性を残す結果となった。