本書執筆の方針は「あとがき」に詳しい。家康や真淵のような遠い過去の偉人を対象とせず、最近の人のみを取り上げたとし、「最近の時代に、しかも我々の身近にあって、今日の発展を築いた功労のある人達の、その事蹟と生涯を書いて収めたものです。」と述べている。三巻とも、本文は大体四百六十頁前後で、取り上げられている人物全二十四名のうち、第二巻の金原明善(三百十七頁)と第三巻の西川熊三郎(二百五十二頁)に多くの頁を割いていることが注目される。全編会話文を交えフィクションを含むが、郷土の先人の姿を親しく読者に伝えようとする熱意の伝わってくる読み物となっている。
この後、御手洗は昭和六十年七月(享年八十四)に亡くなるまで、郷土史・伝説・民話の研究を続け旺盛な執筆活動を展開し四十冊以上の著作を刊行した。
図2-72 『遠州偉人伝』第一巻