【悪質商法】
悪質商法とは法律の網の目をくぐって行われる詐欺まがいの悪質な商行為で、無店舗販売や電話、ダイレクトメールなどを使うことで増加してきた。昭和五十三年(一九七八)から平成元年頃、新聞に取り上げられた例を見ていく。昭和五十三年静岡県西部地方で公的資格と紛らわしい〝資格販売業〟が盛んに行われていた。悪徳業者は郵便や電話で受講者を誘い、受講料を支払えば簡単な講習でいい加減な免状を与えた。被害者は浜松商工会議所に苦情を持ち込んだが、法的な規制もなく、誘われた方が気を付ける以外に防止策はなかった(『静岡新聞』昭和五十三年七月一日付)。同五十四年には、土地価格の高騰と宅地供給不足に目を付け、住宅等が建築できない市街化調整区域内の土地を巧みな宣伝文句で分譲する悪質商法が横行した。浜松では毎週のように新聞の折り込み広告が入っていたという(『静岡新聞』昭和五十四年十月四日付)。
その後も悪質商法は後を絶たず、昭和六十二年までに、県西部県民サービスセンターや市町村の相談窓口に寄せられた苦情には、消火器等の訪問販売(かたり商法)、羽毛布団を中心としたSF(催眠)商法、印鑑等の霊感商法等があった(『静岡新聞』昭和六十二年九月二十三日付)。同六十四年一月の記事には前記のもの以外の苦情・相談として、英語、学習教材などの販売、キャッチセールス(アンケート等を利用して近づき、事務所や喫茶店に誘い契約させる)によるエステティックの契約などがあったと報じられている(『静岡新聞』昭和六十四年一月四日付)。
これらの悪質商法に対しては昭和四十三年に消費者保護基本法を制定したり、同五十年代から六十年代にかけて消費者保護のための法律が制定され、これに基づいて警察も取り締まりを強めていった。
消費者が悪質商法の被害に遭わないように行政は昭和六十二年以降も県下一斉のキャンペーンや特別法律相談、学習会などを開催して啓発活動に努めた(『静岡新聞』昭和六十二年九月二十三日、同六十三年六月一日、平成元年十二月二日、同四年五月三十日付)。しかし、その後も悪質商法の手口は悪質、巧妙化していった。