浜松市消防本部は昭和五十一年(一九七六)東海地震発生の可能性が指摘されて以来、地震に対して市民の安全を確保するための様々な対策を打ち出した。このうち、ここでは消防水利と消防機械について記してみる(『消防年報』昭和六十一年版)。以下の数字は、昭和五十一年度から六十一年度までの合計である。
【消防水利】
第一は消防水利の充実が挙げられる。昭和五十一年以来、建物密集地域や消防水利稀薄地域および地域防災計画指定の避難場所など重要箇所に耐震性防火水槽などを建設した。このうち耐震性防火水槽は容積百立方メートル級、六十立方メートル級、四十立方メートル級の三種で合計二百六十八、鋼管製防火井戸は百三十二に及んだ。
【消防機械】
第二は消防機械の充実である。具体的には1.消防用車両、2.消防用無線機、3.可搬式小型動力ポンプ、4.その他の機械、5.飲料水確保機械等の五つである。
【自主防災隊】
1は震災に伴う断水時の飲料水搬送および非常用電源を確保するための特殊車両である。それらは昭和五十二~五十三年にかけて導入された。小型動力ポンプ付七・五トンの水槽車三台は中消防署鴨江派出所、東部消防署、南部消防署篠原派出所にそれぞれ配置された。また、電源照明車(一台)は中消防署鴨江派出所に配置された。2は有線電話回線の断線が予測されるため、出動部隊の統制と現場状況の把握および今後予測される地震予知情報等の連絡体制を確保するための無線設備である。種類は車載・携帯、無線式受令機等四種類で、昭和五十二年から整備が進められた(総数五百九)。3は道路、建築物等の崩壊という悪条件下では、消防隊の活動が極めて制約され、かつ震災時に予想される同時多発火災に対処するためのものである。総数四百七十三、そのうち三百七十九は市内各自治会単位の自主防災隊に分けられた。4は市街地に対する消火器の拠点配置および地震災害時の人命救助資材である。消火器(二百十)、救助用ボート(十三)、チェンソー(十)などである。5は震災後の飲料水の確保を図るためのろ水機や小型移動水槽である。また、市内一円の水量豊富な防火井戸の水質検査を実施し、実態把握に努めた。ろ水機は二十二、移動水槽三十、水質検査は千百三十回実施した。