[特色ある研究活動]

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 この時期(昭和三十年代半ばから平成元年まで)における小中学校の研究活動は学校独自の研究のほか、市や県の教育委員会、文部省の指定研究など多方面にわたり、多くの成果を挙げた。小学校では国語や算数、理科、音楽などの教科から道徳や給食など、中学校ではひとつの教科の研究より道徳教育、進路指導、生徒指導、体力づくりなどの分野での研究が盛んであった。小学校においては一つの教科を長年にわたって研究してきた学校もあった。例えば、昭和二十五年より算数教育に取り組んできた村櫛小学校、音楽では篠原小学校や芳川小学校、昭和三十年代半ばから国語教育(読解指導)の第一人者、文部省教科調査官の沖山光を招いて研究に取り組んだ都田小学校など、数え上げたらきりがないほどである。都田小学校の創立百周年記念誌『清流』に昭和三十五年卒の松本幸子は「わたしが小学校の六年生のときだったと思う。都田小学校で、国語の研究会があった。全国から、いろんな先生が集まって、わたしたちの授業を見てくださる、とのことだった。(中略)その当日は確か、『塩田の父』という題材で授業をしたかと思う。全部で、五十人くらいもいただろうか、教室中をびっしりと、全国の先生方が(中略)その日は、主人公の様子や気持ちのでている文をさがす第二次読みから、主題を見つけるところで、(中略)次第に発表も活発になっていった。そのときの、国語の物語文の読み取りの学習は、強くわたしに、印象づけられた。中学生になって、一斉の学習の場では、こういう方法がとられなかったのだけれど、わたしは自分でこの方法で、主題等を見つけ出そうとした。そのおかげで、中学時代・高校・大学と、ずっと国語はわたしの好きな教科であったのだな、と感謝している。」と記している。
 
【もりのこ教育】
 昭和五十年代の初めから「もりのこ教育」が新津小学校で展開された。校庭には昔の寺院跡の名残をとどめるやまももやしいなどの大木が茂っているという環境の下、ももんだいをみつけよう りりかいのためによそうをたてよう ののりこえるためにかんがえよう ここれでよいかたしかめよう という学び方(図3―16右)を学ばせ、さらに生き方を学ばせようと研究に取り組んだ。学び方のしつけが各教科で徹底され、そのほか、もりのこタイム、黙動清掃、集団訓練、環境整備、児童会活動、そして家庭生活の中にももりのこ教育が取り入れられた。また、PTAや地域、幼稚園、中学校とも連携して素晴らしい教育実践が行われ、特にもりのこの学習過程は多くの学校でも取り入れられていった。同校が発行した「もりのこ教育」はこの時代の貴重な教育実践記録であり、また、何よりこの冊子に登場する子供たちの表情で同校の教育実践の素晴らしさが分かる(図3―16左)。

図3-16 もりのこ学習の学習過程(右)と児童の様子(左)

【静岡大学教育学部附属浜松小学校 浜松中学校】
 浜松には静岡大学教育学部附属浜松小学校と同浜松中学校という二つの附属学校がある。これらの学校は市内の小中学校と同様の教育がなされているが、そのほかに教育学部の学生の教育実習を担当することと教育の先駆的な研究を行い、ほかの学校にその模範を示す役割を担っている。両校ともその時代に合った教科学習や道徳の実践などの研究に取り組み、その成果を東京の大手の教育関係の出版社から刊行した。