さらに、浜松駅前への大型店の進出(増床)が計画された。浜松ショッピングプラザ(核店舗はイトーヨーカ堂)、中貿ビル(遠鉄百貨店)、松菱増床の三つであった。昭和五十六年七月、イトーヨーカ堂と遠鉄百貨店は相次いで三条申請(建物設置者の届け出)を行い、さらに、老舗百貨店である松菱も八千七百六十二平方メートルの増床計画を申請した(詳しくは『新編史料編六』 五産業 史料31を参照)。これによって駅周辺大型店問題は一挙にヒートアップしていった。地元の商店会を代表した組織である浜松市商店会団体連絡協議会は反対の意向を打ち出した。その後、三年以上にわたって紛糾したものの、昭和五十九年八月、浜松商工会議所の商調協は三大型店の売場面積をついに一本化できず、商業者と商業者以外の委員の両論併記で結審した(表3―10参照)。これを受けて、国の大店審は三回の審議と現地調査を行い、同年十一月に以下のような結論を出した。その結審内容は、浜松ショッピングプラザと松菱は五条申請(小売業者の届け出)時の売場面積(浜松ショッピングプラザは一万五千百平方メートル、松菱は五千五百平方メートル)がそのまま認められたのに対して、遠鉄百貨店は二万三千百十平方メートルから一万七千三百平方メートルへ削減された。これにより、浜松駅前に大型小売店が次々にオープンすることになった。昭和六十二年七月、トップを切ってオープンしたのが浜松ショッピングプラザ(イトーヨーカ堂浜松店)であった。店舗は鉄筋コンクリート造り地上六階地下一階、売場面積は約一万七千平方メートルで、このうちヨーカ堂が一万二千平方メートル、テナント(四十七店舗)二千六百平方メートル、残りが共有となった。イトーヨーカ堂浜松店は、同店の東海地方の店舗の中で最大規模のものになった。
表3-10 商調協で結審した売り場面積
商業者4人を除く全委 員が認めた売場面積 | 商業者が認めた 売場面積 | 5条申請売場面積 | |
浜松ショッピングプラ ザ(イトーヨーカ堂) | 15,100m2 (地権者2,668m2) | 7,000m2 (地権者2,668m2) | 15,100m2 |
遠鉄百貨店 | 17,300m2 | 14,000m2 | 23,110m2 |
松菱百貨店 ※増床 | 5,500m2 (地権者795m2) | 4,000m2 (地権者795m2) | 5,500m2 |
【メイワン 遠鉄百貨店】
また、浜松ターミナル開発と国鉄静岡鉄道管理局から申請されていた浜松ターミナルビルの建設についても、昭和六十一年六月商調協での審議が終わり事実上結審した。それによると当初申請した売場面積の約四十二%をカットした六千八百五十平方メートルとなった。その理由は遠鉄百貨店が申請の約四十%カットで決着したため、その延長線上で調整されたとのことであった。同六十三年五月、浜松ターミナル開発が建設を進めてきた浜松駅ビルがメイワンとして完成、その名のごとく五月一日にオープンした。ターミナルビル(メイワン)は地上八階地下一階建て、延べ床面積は約三万千八百平方メートル(店舗面積は七千五百六十二平方メートル)でファッション、雑貨、飲食などテナント百四十六店が入居した。大型店三店のうち最後の開店になったのが遠鉄百貨店で、昭和六十三年九月十四日にオープンした。地上八階地下一階、売場面積は一万七千三百平方メートルになった。遠鉄百貨店が立地した場所は、中部貿易倉庫の所有地で、駐車場として利用されていた。東海道線の高架に伴い、線路が中部貿易倉庫のさらに南側に移り、浜松駅がこの敷地のすぐ東に建設されるため、一等地として脚光を浴びた。東京や名古屋の大手百貨店の進出の情報もあったが、最終的には遠鉄百貨店に落ち着いた。その理由は、①地元の企業であるため商調協を通るに当たって有利であること、②遠鉄の高架化に伴って建設される新浜松駅と連結できるなどであった。
【大規模小売店舗】
この結果、表3―11によると、平成元年三月現在で浜松市の小売業売場面積は五十四万三千七百七十九平方メートルで、このうち第一種大規模小売店舗面積(千五百平方メートル以上)は十八万四十五平方メートルを占め、全売場面積の三十三・一%に達した。第一種は県内トップの占有率になった。
このような大規模小売店の開店ラッシュにより、大型店同士の競争はいよいよ激化していった。駅前三大型店に対して、既存の大型店や百貨店は生き残りをかけて、食品売り場の充実、商品構成の見直し、ブランド商品の拡充などそれぞれ特色を打ち出す戦略をとっていった。
表3-11 浜松市内大規模小売店舗出店状況
第1種大規模小売店舗(27店) | 業態 | 店舗面積 (m2) | 開店年月 |
松菱百貨店 | 百貨店 | 20,910 | 昭和12年6月 |
浜松家具センター | 専門店 | 1,652 | 41年11月 |
遠鉄名店ビル | 寄合百貨店 | 4,408 | 42年10月 |
長崎屋浜松店 | スーパー | 3,846 | 44年3月 |
ニチイ浜松店 | スーパー | 8,389 | 44年9月 |
西武百貨店浜松店 | 百貨店 | 22,585 | 46年10月 |
栗田家具センター浜松店 | 専門店 | 2,264 | 47年4月 |
加古家具店浜松店 | 専門店 | 1,600 | 47年11月 |
ユニー浜松泉町ショッピングセンター | スーパー | 5,435 | 48年9月 |
浜松モールプラザサゴー | 寄合百貨店 | 2,781 | 49年4月 |
丸井浜松店 | 月賦百貨店 | 8,111 | 49年8月 |
千代田家具浜松店 | 専門店 | 2,475 | 50年5月 |
名鉄葵町ショッピングセンター | スーパー | 3,120 | 51年4月 |
遠鉄ショッピングセンター西ケ崎店 | スーパー | 1,658 | 51年5月 |
名鉄駅南ショッピングセンター | スーパー | 7,823 | 53年3月 |
カーマホームセンター浜松店 | 専門店 | 1,893 | 53年10月 |
ニチイ宮竹ショッピングデパート | スーパー | 9,322 | 54年10月 |
加古家具店篠原店 | 専門店 | 2,971 | 55年6月 |
ジャスコシティ浜松ショッピングセンター | スーパー | 9,020 | 55年11月 |
浜松サーラ | 専門店 | 3,757 | 56年4月 |
マルス家具店 | 専門店 | 1,504 | 57年2月 |
浜松松竹ビル | 寄合百貨店 | 1,859 | 61年12月 |
上野屋浜松家具会館 | 専門店 | 2,800 | 62年2月 |
浜松ショッピングプラザ | 寄合百貨店 | 15,100 | 62年7月 |
浜松駅ショッピング街 | 寄合百貨店 | 7,562 | 63年5月 |
遠鉄百貨店 | 百貨店 | 17,300 | 63年9月 |
初生ショッピングセンター | スーパー | 9,900 | 平成元年3月 |
市小売業売場面積 | 543,779m2 | ||
第1種大規模小売店舗(1,500m2以上) | 180,045m2 | 33.1% | |
第2種大規模小売店舗(500~1,500m2未満) | 63.686m2 | 11.7% |