ドルショック、オイルショック、さらにはプラザ合意による急激な円高といった度重なる国際環境の激変に伴って浜松の三大産業も大きな影響を受けてきた。昭和四十八年から平成元年までの三大工業の製造品出荷額の推移を図3―29で見ると、繊維産業は長期停滞傾向、楽器産業は漸増傾向から横ばいないし減少傾向、輸送機械工業だけが成長していることが分かる。つまり、この十七年間で三大産業は一強二弱の傾向が表れてきた。戦後、三大産業の成長によって発展してきた工業都市・浜松も輸送機械工業に依存した工業都市へ変貌してきたのである。
図3-29 三大工業の推移(製造品出荷額)
さらに、工業統計で三大工業の変化を見る(表3―13)と、輸送機械工業への特化の傾向がより鮮明になってきたことが分かる。工業出荷額の構成比で見ると、繊維工業は昭和五十年に十一・一%の割合を占めていたが、十五年後の平成二年には四・三%まで縮小し、三大産業の一つとしての地位を失ってきた。楽器産業が含まれるその他の製造業は、昭和五十年で二十一%の割合を占めていたが、平成二年には十・五%に減少し、辛くも三大工業の地位を維持している。これに対し輸送機械工業は三十・八%(昭和五十年)から三十七%(平成二年)にその割合を拡大し、主として輸送機械の部品等を製造する機械金属七業種(鉄鋼・非鉄金属・金属製品・一般機械・電気機械・輸送用機械・精密機械)の出荷額の割合は、平成二年で六十三・三%も占めるに至った。
表3-13 全産業に占める三大工業の製造品出荷額の構成比 (単位:%)
繊維工業 | その他の 製造業 (楽器を含む) | 輸送用機械 器具製造業 | 機械金属 7業種 | |
昭和50年 | 11.1 | 21.0 | 30.8 | 50.3 |
55年 | 7.7 | 19.4 | 31.7 | 55.6 |
60年 | 6.1 | 15.5 | 34.8 | 60.0 |
平成2年 | 4.3 | 10.5 | 37.0 | 63.3 |
注:機械金属7業種は、鉄鋼、非鉄金属、金属製品、一般機械、電気機械、輸送用機械、精密機械。
高度成長期の頃までは、三大産業はともに拡大発展傾向を示していたが、低成長期になると長期停滞を見せる工業と成長する工業とが明確に分かれるようになっていった。そのため、地方工業都市という狭い範囲内での受注先に依存する中小企業は輸送機械工業の特定企業を頂点にした産業組織に編成されていった。このことは、浜松の産業発展の特徴の一つである複合的産業発展を阻害する要因にもなりかねない。