昭和五十年代から六十年代は新たな技術革新の時代であった。コンピュータに代表されるエレクトロニクス、これを機械に組み入れたメカトロニクス(機械の電子化)や産業用ロボットの普及など、これまでとは趣を異にしたイノベーションが、猛烈な勢いで地域の各産業の間で拡大していった。住宅着工や家具の不振で、長い間低迷を続けていた木工・工作機械業界も先端技術を武器に回復してきた。
【庄田鉄工】
木工機械の世界的企業である庄田鉄工は昭和四十三年にNCルータマシン(数値制御装置付き溝切り工作機)を開発、昭和五十六年には国内シェアも七十%を占めるトップメーカーになった。同年七月には多用途のNCロボットを開発した。このロボットマシンは木材から金属まで硬度の異なる素材に幅広く対応することができ、さらに切削、研削、溶断接から組み立て作業のボルト締めまでNCで自動的に行うことが出来た。切削と研削を同じ機械で行うことは従来の工作機械では考えられないことで、ロボットのヘッドの部分に電動工具、電気溶接ホルダー、レーザーヘッド、ウォータージェットなどを取り付けることによって特殊加工も可能になった。同五十七年には米国航空機内装メーカーの最大手であるウェーバ―社からの依頼で航空機専用のNCルータを開発し納めた。同五十九年には金属工作機械分野にも進出した。同社が開発したNCロボットマシンはフライス、ドリル、研磨などのほか、溶接、溶断など十種類近くの金属加工をNC装置で自動的に使い分ける工作ロボットであった。
【平安鉄工所】
一方、平安鉄工所も昭和四十四年にNCルーターを開発し、さらに同五十八年にはNCテープ不要の自動プログラミング機能を搭載したNC複合マシン(GPシステム)を開発した。従来のNC機械は図面をプロセスシートに数値化し、その数字をテープにさん孔する必要があった。新開発した機械はNCテープ作成を不要にし、マイクロコンピュータに直結したディスプレイを見ながら寸法を入力するだけで自動的に切削加工できる。これにより①複雑な作業と時間を必要とするNCテーププログラム過程を省力化できる、②多品種少量生産に対応できる、③ソフト技術者がいなくても簡単にNCマシンを操作できることになった。
【遠州製作】
総合織機メーカーであった遠州織機も昭和三十三年から工作機械分野に進出した。同三十五年には会社名を遠州製作(株)とし、NCフライス盤の生産を開始するなど工作機械分野へ進出した。昭和五十一年にはヤマハ発動機の受託生産を開始し、輸送機械分野の事業も取り入れた。同五十九年頃からはライン型マシニングセンタや汎用機とNC機械の機能を両立した自動フライス盤などの生産を開始した。なお、昭和五十二年には織機生産から撤退した。
日進機械製作所や桜井製作所などの工作機械メーカーも先端技術を取り入れ、センタレスグラインダや双頭ロータリーフライス盤など独自の製品を生産した。