[洋菜の産地化]

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 浜松では戦前から、メロンや洋菜などの新しい作物を導入し、産地化してきた歴史があった。特に米の生産調整(減反政策)以降は水田転作作物として洋菜や果物、花き類など産地化の動きが活発化していった。
 
【施設園芸】
 表3―19において浜松市の畑作物の生産状況を見ると、多種多様な作物を生産してきたことが分かる。中でも、粗生産額が十億を超えて主産地を形成してきた作物は、篠原のたまねぎ、三方原の馬鈴薯、浜松東農協、同西農協管内のセルリーである。浜松の畑作農業は、従来の露地栽培から集団化や団地化による施設園芸が中心になり、また、生産される作物も従来の根菜類や豆類から洋菜、花き、果物などが増加し、いわゆる都市近郊農業を形成してきた。この都市近郊農業は東京・大阪の二大消費地の中間という恵まれた位置にあり、東名インターを利用して短時間に鮮度の高い農産物を出荷できるという立地条件の中で発展してきた。また、従来、不毛の台地と言われてきた三方原台地が三方原用水の完成とともに農産物栽培の適地に生まれ変わったことも大きな要因である。さらに、減反政策以降の転作作物としても拡大してきた。
 
表3-19 農産物の粗生産額の推移 (単位:百万円)
昭和48年
昭和55年
昭和60年
昭和63年
きゃべつ
104
166
261
237
白菜
236
485
269
226
ほうれんそう
102
230
286
383
ねぎ
149
303
279
276
たまねぎ
534
860
614
1,568
大根
448
776
492
558
にんじん
67
68
59
51
里芋
286
105
251
195
レタス
131
81
399
294
セルリー
632
2,027
1,941
1,591
パセリ
90
445
484
281
花野菜
(ブロッコリー含む)
79
167
178
196
大豆
9
21
33
36
落花生
6
98
97
70
甘藷
384
862
626
822
馬鈴薯
519
1,139
1,016
1,033
きゅうり
273
349
325
212
西瓜
356
308
272
319
なす
121
176
284
215
トマト
153
275
294
296
温室メロン
1,047
2,052
2,412
2,306
露地メロン
90
67
155
101
いちご
2
34
51
123
みかん
988
1,770
2,016
928

45
86
116
104
出典:『浜松市統計書』各年版より作成

 
【洋菜】
 このような要因によって洋菜の生産が盛んに行われるようになってきた。レタス、セルリー、パセリ、ブロッコリーなどの洋菜は年々生産を拡大してきている。中でもセルリーは全国の生産量の九十%を占め、浜松の特産品の一つになった。浜松地方のセルリー栽培面積は約百七十五ヘクタール(昭和五十六年現在)で、年平均百二十万ケース(一ケース十キロ)を出荷、売り上げも十五~十八億円に及んでいる。パセリの本格的な栽培も昭和三十年代の中頃から蒲地区や庄内地区で始まった。従来、庄内白菜としてブランドを作り上げてきた白菜も斜陽化し始めてきたため、庄内地区では白菜に代わる作物としてパセリの栽培が普及していった。昭和三十八年、パセリ生産者の組織づくりが行われ、庄内パセリ委員会が組織化された。当初、パラマウント系の純粋種を導入したが収量が少ないという問題があったため、品種改良を重ねU・Sパラマウント系の良い株だけを選別し、庄内パセリを作り上げた。この品種の成功により、昭和五十年以降、質量ともに日本一のパセリ産地となった。
 
【馬鈴薯】
 三方原の馬鈴薯も主産地を形成してきた。三方原馬鈴薯が市場に初めて出荷されたのは昭和二十七年頃で、昭和三十五~六年には産地が形成された。三方原の馬鈴薯は赤土で弱酸性の土壌から生まれ、玉につやがあり、おいしいことで評判になった。また、馬鈴薯のハウス栽培も行われてきた。露地物に比べて約二カ月早く収穫され、「新ジャガ」として珍重された。馬鈴薯の栽培には連作障害が付きものであるため、土壌改良のための努力が行われた。
 
【サラダ菜】
 浜松西農協管内では、サラダ菜の産地化が進んだ。神久呂地区を中心にしたサラダ菜栽培は、昭和六十三年頃には全国生産の一割を占めサラダ菜産地を形成した。同地区では昭和五十八年に大型連棟ハウスを建て、三作から五作の周年栽培を行い、一日の出荷量も二万ケース以上に増えていった。同地区は、従来大根や馬鈴薯を中心に生産してきたが、洋菜中心のハウス園芸地帯に変貌した。しかし、周年栽培であるため土壌病害が発生し生産性が落ちていった。そこで昭和六十二年十二月連作障害を避けるために土耕から養液栽培へ転換していった。
 これら洋菜栽培の問題点は、稲作と違って価格保証がなく市場での相場が不安定であるため、過剰生産によって値崩れを起こしたり、逆に、不作のために価格が暴騰するといったことが起こりやすいところにある。従って、生産コストの引き下げと計画的な生産と出荷体制の確立が重要な課題となった。