[低コストの畜産経営の実現と問題点]

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【畜産】
 農基法農政以来、わが国の農業は規模拡大と近代化=機械化、それに食生活の洋風化に合わせて野菜・果樹・畜産の拡大を目指してきた。酪農や畜産においても多頭化してスケールメリットを追求しコストダウンを図るといった経営である。当地方における畜産も規模の拡大を追求し設備集約型農業を追求してきた。
 昭和四十八年度の「家畜飼養戸数・飼養頭羽数」を『浜松市統計書』で見ると、牛に関しては乳牛が千三百五十五頭、飼養農家戸数が百三十戸で、一農家当たりの頭数は約十頭であった。役肉牛は千九百九十一頭、農家戸数は九十三戸で、一農家当たりの飼育頭数は約二十一頭であった。養豚については飼育頭数が三万四千二百六十五頭で、農家数は五百五十八戸で、一農家当たりの頭数は約六十一頭であった。養鶏については百十五万五千六百一羽で、飼育農家戸数は八百三十九戸、一農家当たりの羽数は約千三百七十七羽であった。畜産全体の年間売り上げは七十億円(昭和四十八年度)を突破し、浜松市の畜産は県下一を誇っていた。このような規模に達した最大の原因は多頭羽化を推進し、規模の拡大による設備集約型農業を実現し、コストの削減を図ってきたところにあった。
 しかし、畜産の発展にはいくつかの問題があった。第一は、乳価や卵価が不安定で、かつ飼料の高騰という問題を常に抱えていた。第二に、地域経済の成長の中で農業では後継者問題や労働力の不足といった問題があった。第三に、市街地の外延的拡大に伴って悪臭などの畜産公害問題が発生した。わが国畜産の最大の問題点は、規模を拡大する上で土地面積拡大の制約が存在したことである。特に、浜松においては工業の急激な成長に伴い農地の宅地化・工場用地化が進み、土地問題が畜産発展の制約条件になった。このことから自給飼料を生産する土地を確保できないため、購入飼料に大きく依存するという体質が生まれてきた。そのため畜産経営が飼料の市場価格に左右されるという弱点を持つようになった。