浜松市の全産業に占める水産業の地位はさほど大きなものではないが、昭和五十二年度の生産額は四十億円を超している。浜松市の水産業は浜名湖における漁業が中心で、海面漁業、浅海養殖漁業、内水面養殖漁業の三つから成り立っている。
【海面漁業】
海面漁業は、一・五トン内外の小型船、百八十一隻の登録漁船で行われている。魚種はエビ、カニ、ウナギ、アサリなど三十五種以上に上り、漁法も小型定置網、三枚刺網、メッコ網など二十種近くあるが、上記の三漁法が主である。海面漁業全体の漁獲量は五百七十五トンで、生産額に直すと二億六千二百万円になるが、一漁家当たりに換算すると百四十四万七千円程度で、海面漁業専業では生計を立てることは出来ない。そのため漁家(百八十一戸)の三割は浅海養殖漁業を同時に営んでいる。
【浅海養殖漁業】
次に浅海養殖漁業を営む漁家は四十七戸(ノリ二十五戸、カキ二十二戸)で、ノリの生産高は二百四十八万千枚、カキは三十二トンとなっている。生産額ではノリが三千七百八十五万二千円、カキが四千二百四十万円であるが、一漁家当たりの粗生産額ではノリ百五十一万四千円、カキ百九十二万七千円に過ぎない。
【内水面養殖漁業】
浜松の漁業で最も高い生産額を上げているのが内水面養殖漁業で、その主力はウナギの養殖である。内水面養殖漁業の主要魚種はウナギ、アユ、スッポンで、養魚池は篠原・馬郡・村櫛・協和・庄和町に集中している。養殖を営んでいる経営体は百五十三(ウナギ百四十六、アユ七)で、ウナギの池面積は三百二十二ヘクタールで、生産高千七百四十トン、生産額三十二億五千七百二十八万円に達し、一経営体当たりの粗生産額も二千二百三十一万円に上っている(昭和五十四年版『市政の概要』)。浜松のウナギは全国的に高い評価を得ているものの、魚病の発生、地下水の不足、稚魚不足や餌料高によって厳しい環境に置かれている。また、台湾などから安いウナギが輸入され、浜松ウナギの前途は必ずしも明るいものではなくなってきた。
厳しい環境に置かれている浜名湖の漁業に対して様々な振興策が採られた。静岡県は昭和四十五年度より三カ年かけて浚渫工事を行った。これはカキ、ノリ養殖の振興策の一環で、六百十ヘクタールの低利用水域を新規ノリ漁場化するとともに、カキについても、海水交流の効果を湖内や入江等にまで及ぼそうとした。この事業はカキ、ノリの養殖にとって大きな効果を上げた。一方、海面漁業の振興策として浜名湖地区漁場造成事業が、昭和四十九年度から同五十一年度にかけて実施された。この事業は湖内魚類水揚高の四十六%を占めるエビとカニの増殖を図るために、低利用水域において浚渫船による作澪工事を行い、エビやカニの生育適地化を図るというものであった。これにより、エビ、カニとも昭和五十三年度の水揚高(金額)を同四十八年度に比し、それぞれ一・四七倍、一・七三倍とすることを目指すものであった。