市営バスは、昭和三十二年度以降単年度収支でもほぼ赤字を記録、同四十八年度の累積赤字額は九億五千六百五十七万円に達した。既述のようにワンマン化、不採算路線の整理統合、料金改定を軸とした自動車運送事業第1次財政再建計画では、バス利用客の減少に歯止めがかからなかったばかりか、運輸資材の高騰や人件費の増加による支出を吸収できなかった。営業費用が営業収入を大幅に上回る状態が長期にわたって続き、累積赤字額は増え続けた。新聞報道によれば、昭和五十二年三月時点で、市営バス二十一路線中、黒字路線はわずか三路線に過ぎなかったとも言われた。
【経営健全化計画】
このため、昭和四十九年三月に新たに四十八年度を初年度とする第2次経営健全化五箇年計画(~五十二年度)が決定した。同計画には、路線の再編整備、貸切事業の強化とともに、昭和四十九年度からの老人や身体障害者等の運賃無料化や既述のバス優先レーンの設置などが盛り込まれた。また、巨額の累積債務については、一般会計からの補塡(ほてん)と財産処分による軽減化が図られた。
【自主再建の断念】
しかし、企業環境はその後も悪化し、昭和五十一年度末には不良債務十億六千万円余が見込まれた。ここに至って、市は自主再建は難しいと判断し、昭和五十二年三月の市議会で路線の更なる再編整備、貸切事業の縮小等の合理化案を示すとともに、不良債務解消分として一般会計から一億七千六百万円を繰り入れる補正予算案を上程した。また、三月九日には昭和五十二年度の当初予算案に一般会計から二億五千万円の繰入金予算案も上程した。こうした提案に市議会は、自動車運送事業の存廃等、今後の方針を明示する等の付帯決議を付して了承した。
付帯決議を受けて市は、昭和五十二年六月、市長の諮問機関として浜松市自動車運送事業対策協議会を設置した。同協議会は、五十三年三月に「市営バス事業は、(中略)現時点では事業を継続することが適当である。」とし、二カ年ごとの料金値上げ、赤字路線の統廃合、人件費の削減等を内容とする最終答申を提出した。この結果、答申内容を骨子とし、昭和五十三年度を初年度とする第3次経営健全化実施計画(~五十七年度)が策定され、実施に移された。五十二年度末の不良債権については、一般会計からの計画的な助成措置により解消された。
昭和四十八年からほぼ毎年バス料金の値上げが実施されたが、第3次経営健全化実施計画がスタートした昭和五十三年には六月と十二月に二度にわたる値上げが行われた。この結果、同年十二月には対四十八年度比で均一区間運賃二・五倍、基準賃率二・三倍、最低運賃大人同二・三倍、小児二倍となった。昭和五十四年十二月の値上げでは均一制運賃を廃止して、基準賃率と最低運賃の二本立てとし、昭和五十六年十二月にはそれぞれ二十六円、大人百円・小児五十円とした(表3―21)。
表3-21 市営バス運賃の推移 (単位:円)
均一区間 運賃 | 基準賃率 (1キロ当り) | 最低運賃 (大人) | |
昭和48年2月 | 40 | 8.6 | 30 |
昭和49年8月 | 50 | 11.8 | 40 |
昭和50年11月 | 70 | 17.4 | 50 |
昭和51年4月 | 80 | 17.4 | 60 |
昭和53年6月 | 90 | 20 | 70 |
昭和53年12月 | 100 | 20 | 70 |
昭和54年12月 | 23 | 80 | |
昭和56年12月 | 26 | 100 | |
昭和59年2月 | 27.8 | 100 | |
昭和60年12月 | 28.7 | 120 |
注:昭和50年11月と昭和53年6月は暫定運賃である。
注:昭和54年12月より均一制運賃廃止(対キロ区間制運賃一本化)。
【路線廃止】
また、昭和五十三年十月からは、バス利用者の減少が著しかった東循環、北循環、曳馬線(一部区間)、和合線、浜団地線の五路線を廃止した。市バス路線は十六路線に減少し、これにより交通部職員四十四人が配置転換等により減員された。しかし、こうした改善策にもかかわらず、経営は悪化の一途をたどり、五十七年度末の累積欠損金は再び七億四千万円へ増加した(表3―20)。
表3-20 市営バスの営業収支と累積欠損金の推移
年度 | 輸送人員 千人 | 営業収入 千円 | 営業費用 千円 | 累積欠損金 千円 |
昭和47年度 | 17,719 | 672,309 | 896,549 | -761,674 |
48年度 | 16,442 | 876,164 | 1,079,677 | -956,576 |
49年度 | 17,424 | 1,006,435 | 1,374,030 | -676,189 |
50年度 | 16,831 | 1,200,146 | 1,458,077 | -885,906 |
51年度 | 14,852 | 1,393,093 | 1,586,907 | -914,592 |
52年度 | 14,350 | 1,358,772 | 1,665,222 | -1,046,826 |
53年度 | 12,532 | 1,365,373 | 1,495,698 | -808,208 |
54年度 | 10,992 | 1,374,137 | 1,494,111 | -615,601 |
55年度 | 10,541 | 1,405,985 | 1,575,397 | -506,517 |
56年度 | 10,059 | 1,399,911 | 1,640,970 | -487,277 |
57年度 | 9,683 | 1,392,899 | 1,656,262 | -743,481 |
58年度 | 8,980 | 1,252,492 | 1,501,665 | -670,860 |
59年度 | 7,968 | 991,864 | 1,395,495 | -562,748 |
60年度 | 5,293 | 641,934 | 841,530 | -326,771 |
61年度 | 838 | 109,145 | 233,711 | -93,069 |