他方、浜松成人病予防研究会の発案で、成人病予防週間にちなんで県の移動検診車による無料検診が昭和三十八年二月十五日に行われた。また右の研究会は子供を対象とした成人病調査も行っている。昭和三十八年一月から市内の東小学校、元城小学校、五島小学校、北小学校、中部中学校の全校児童・生徒を対象に、県衛生部予防課の姫野義哲医師が検尿を行った。その結果、尿からタンパクが検出された子は、再検査して腎炎症状が判定された場合は学校に報告し、学校医の指導に委ねた。
これによって腎炎と診断されて休学や治療の指導を受けた児童・生徒の数は、東小千百人のうち六人、元城小千五百人のうち八人、五島小二百八十八人のうち八人、北小千三百人のうち十四人、中部中千九百人のうち三十五人であった。この事態を『静岡新聞』(昭和三十八年三月三十日付記事)では、〝子供の成人病〟と表現した。これはまさに形容矛盾と言うべく、「変わった呼称の病状」である。浜松成人病予防研究会は新学期から全市の小・中の児童・生徒を対象とする検診を行い、早期発見に努めるように市側に働き掛けるという。さらに県衛生部からの厚生省への報告は、学校保健の指導上の課題として浮上しているのである。昭和四十年三月二十二日付の『静岡新聞』には浜松市教育委員会が子供の成人病対策として、市内四十五小学校の全児童三万七千人の尿検査を実施したという記事が見える。
なお、飽食の時代を背景にした家庭生活の中の子供の食生活について、偏食・孤食・成人病の若年化に言及される場合が多い。浜松市学校保健会では昭和六十二年度に、偏食の有無と健康・生活習慣との関連性について実態把握に努めたレポートを公表している(『浜松市学校保健資料集』所収)。