【オペラ】
浜松市が市制七十七周年記念として企画した、オペラ「袈裟と盛遠」(日本オペラ協会による)の公演が市民会館において行われたのは昭和六十三年十二月十日のことである。
同作品は昭和四十三年、明治百年記念芸術祭のために作られた日本オペラの代表作の一つで、この年の春、都民芸術フェスティバル参加公演として協会が上演したものであり、この年の秋には初の海外公演でポーランドの〝ワルシャワの秋〟に参加して好評を博した作品でもあった。浜松公演のチケットは、約二カ月前から売り出されていて完売となり、当日は会場を埋めた約千三百人が鑑賞した。チケットの売れ行きが好調だった理由としては、浜松合唱団五十人が出演したこと、信愛学園高校音楽科出身の黒田晋也(第六回生)と永田直美(第八回生)が出演したこと、浜松市の音楽のまちづくりが市民に理解され始めたことなどが考えられる。黒田は国立音楽大学を卒業後二期会に所属したテノール歌手。四年前(昭和五十九年)に、二期会オペラ「蝶々夫人」のピンカートン役に抜てきされて注目された。永田は東京藝術大学を卒業後、国内外のコンクールで活躍中であった。浜松市では平成元年十二月にも、第二回オペラ公演として日本オペラ協会による「修禅寺物語」の公演を行った。この時も黒田晋也は源頼家役で出演している。市によるオペラの公演は、この二回で終わりとなったが市民の間でのオペラへの関心は深まり市民オペラの開催へとつながってゆくこととなる。