[地区図書館の充実と中央図書館の誕生]

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 戦前、紺屋町にあった浜松市立図書館(大正九年完成)は、昭和二十年六月十七~十八日の米軍の空襲による焼夷弾攻撃のために蔵書三万五千冊と共に灰燼に帰した。
 戦後の、浜松ユネスコ協力会を中心とする献本運動、松城町に建設された新図書館の開館と、その充実した活動の様子については『浜松市史』四に取り上げた。この図書館は、戦後に建てられた図書館としては全国的に見ても最も早い時期のもので、図書館法の精神を十分先取りした模範的なものであった。しかし、二十年ほど経過した昭和四十年代の半ば頃になると、新しい時代にマッチした新図書館を要望する声が聞かれるようになる。元の図書館は、時代の変化に合わせて改造が行われたりもしたが何と言っても手狭であったのである。
 
【地区図書館】
 こうした状況のところへ、昭和五十年に第二次浜松市総合計画基本計画が策定され、図書館については中央図書館の建設、地区図書館の建設、自動車文庫の充実等が盛り込まれた。地区図書館は既に昭和四十九年四月、南図書館が浅田町に開館していた(平成四年海老塚二丁目に新築移転)が、先の計画に基づいて昭和五十三年四月、文丘町に城北図書館が開館した(平成十八年和地山二丁目に新築移転)。以後、平成十七年の合併までに西(昭和五十四年四月、西伊場町)、積志(昭和五十五年四月、積志町)、東(昭和五十七年四月、子安町)、北(昭和五十八年四月、葵東一丁目)、南陽(昭和五十九年四月、下江町)、可新(平成九年四月、小沢渡町)、はまゆう(平成十六年七月、大人見町)の地区図書館、中央図書館駅前分室(平成十四年四月、旭町)が次々に開館することとなる。
 
【浜松市立中央図書館】
 これまでの浜松市立図書館は、昭和四十九年四月の南図書館の開館に際して浜松市立中央図書館と改称された。この図書館建設のいきさつと経過、また、コンピュータ導入を中心とする設備関係については、冊子『浜松市立図書館戦後開館50周年記念展 浜松読書文化協力会の歩み展』(浜松市立中央図書館、浜松読書文化協力会編、平成十二年十一月一日)に詳しい。以下の記述はこの冊子に基づく。

図3-65 浜松市立中央図書館パンフレット

【コンピュータ管理】
 新しい中央図書館の起工式は昭和五十四年五月二十四日。地下一階、地上二階、延床面積五千百六十二・六一平方メートル、書庫収蔵能力六十五万冊。また、冷暖房完備とコンピュータ管理の出来る最新式の図書館の着工であった。コンピュータ工事など全てを含めた工費は約十四億円に上った。工事の期間中、職員はコンピュータ化に備えて図書にバーコードを貼付する作業などに追われた。落成式を迎えたのは、浜松市制施行七十周年に当たる昭和五十六年の四月十三日(開館は翌十四日)であった。開架書庫の隣には、こどものほんのコーナー、その南におはなしのへやがつくられた。また、点字図書室や新聞・雑誌の読める談話室も明るい南側に設置された。二階には郷土関係の図書を開架式にした浜松資料室(今の郷土資料室)や調査・研究のための参考図書を置いた参考図書室、レコード・視聴覚資料を自由に視聴できる視聴覚室などが出来た。導入されたコンピュータは、貸出・返却・予約・督促・目録・資料検索・利用者登録・図書登録・蔵書点検・統計などの作業が可能であった。利用者にとって最も歓迎されたのは、貸出と返却の時間短縮だった。本の貸出手続きをすると、貸出日・利用者番号・図書番号・返却期日が印字されたレシートが打ち出され、利用者に渡されるというもので、利用者にとっては非常に便利な方式となった。以上のことは、現在では当たり前のこととなっているが当時としては画期的なことであった。
 
【オンラインシステム】
 平成元年には第二次コンピュータシステムが稼働し、全館オンラインシステムとなり、利用者用の端末装置も設置された。平成十三年には第四次コンピュータシステムが導入され、インターネット・利用者端末機からの予約が可能となった。その後もさらに新しいシステムが取り入れられたり、一回の貸出冊数が増えるなど利用者にとってますます便利になった。
 こうして、新しい図書館が機能を開始したのであるが、その時から平成二十四年で既に三十一年が経過したことになる。この間、社会の状況は大きく変化し中央図書館も多くの新たな問題を抱えている。例えば駐車場の狭さが高い利用を阻害する大きな要因の一つになっているが、こうした問題の解決のために、改築をも含めた新たな対応を迫られているというのが実情である。
 
【城北図書館】
 ところで、平成十八年十月一日に開館した城北図書館は第二中央館としての機能を有し、新しい時代に対応した日本有数の図書館となった。その特色は、産業都市浜松を支えるビジネス支援コーナー、IT社会に対応した新しい施設・設備、CDやDVDなどの視聴覚コーナー、視覚障害者のコーナー、四十万冊が収容できるコンピュータ制御の自動閉架書庫などを有し、また、ユニバーサルデザインに対応するなど、これまでの図書館のイメージを変える画期的なものとなった。
 
【駅前分室】
 なお、平成十四年四月、JR浜松駅前にあったビル、フォルテ四階に中央図書館の駅前分室がオープンした。ここから予約した本の受け取りや返却が出来るほか、室内にある端末から浜松の市立図書館全館にある蔵書の検索・予約も可能になり、JRやバス利用者などが会社帰りや学校帰りに立ち寄って利用するのに便利となった。この分室はフォルテの解体に伴って、一時浜松駅前ビルヂング七階に移転し、その後、平成二十三年十一月九日浜松駅前に完成した遠鉄百貨店新館九階に移された。