[浜松文芸館の開館]

833 ~ 834 / 1229ページ
 浜松にゆかりがあり、昭和の終わり頃までに全国的にも名の知られた文芸作家としては小説家の藤枝静男、吉田知子、俳人の相生垣瓜人、百合山羽公、作詞家の清水みのる等がおり、演劇人としては小百合葉子、映画監督としては巨匠木下恵介などがいる。また、このほか全国的とは言えなくとも、遠州人にとってはなじみの深い詩人・歌人・俳人等は幾人かを挙げることが出来る。
 
【浜松文芸館】
 昭和の時代以前にも、これらの人々に関わる展示会が図書館などを会場として開催されたことはあったが回数も少なく規模も小さかった。こうした人々の資料を一カ所に集めて保存し展示する施設が欲しいとの声は浜松市の文化人の間に早くからあったが、それが浜松文芸館の開館という形で実現したのは昭和六十三年のことである。施設は元の浜松市立勤労青少年ホームの建物の一、二階を改装してオープンしたもので、十分なものとは言えなかったが、鹿谷町の浜松城公園の北端で森に囲まれた静かな環境の中にある。昭和六十三年四月二十七日の開館式には、名誉館長に就任した浜松市出身の木下恵介ほか、市の関係者らが多数出席した。資料の収集は前もって進められており、前記の人々のものが相当数集められていた。開館と同時に展示された常設展のテーマは、浜松出身で戦前の文壇で活躍した女流作家鷹野つぎを取り上げた「鷹野つぎの一生」であった。つぎの浜松高等女学校(現浜松市立高等学校)の卒業証書、小説の原稿、作品の初版本、文学上の師であった島崎藤村や親交のあった川端康成、松島十湖の書簡などが展示された。
 同館では、松島十湖、加藤雪膓、柳本城西、原田濱人、鷹野つぎ、相生垣瓜人、清水みのる、百合山羽公、藤枝静男、小百合葉子の十人を「浜松文芸十人の先駆者」としているが、それ以外にも鈴木光司、安藤能明ら新しい人々を含めて、浜松にゆかりある文芸作家の資料を収集し展示を行っている。以上の活動のほかに、短歌・俳句の入門講座、また、著名な講師による講演会を開催しており、さらに、年一回発行の『浜松市民文芸』の編集と発行を担当している。

図3-71 浜松文芸館リーフレット