東京都国立市では昭和五十年三月に電子計算組織の運営に関する条例が制定され、日本で初めて個人情報が保護されるようになった。これ以降、全国の地方自治体では個人情報保護のための条例が制定されるようになっていく。浜松市では昭和六十二年に内規で決めていた浜松市電子計算組織の運営とデータの保護に関する規定を明文化し、新たに個人情報の開示に関する項目を加えて、浜松市の保有する電子計算機処理に係る個人情報の保護に関する条例(後に浜松市個人情報保護条例と改称)を制定、平成四年四月一日に施行した。主な内容は、個人情報の原則的非公開、個人情報の収集制限(思想・信条・宗教・人種など)、本人の請求による開示などであった。条例の対象となる個人情報は電子計算機に記録されているもので、市は仕事をする上で必要最小限の個人情報を保有し、目的以外のための利用や外部への提供はしないとした。市がどのような個人情報を保有していたのかを住民記録、固定資産税(土地・家屋)、国民健康保険、国民年金の四つの事務名から記したのが表4―1である。この条例では自分自身の情報の正しさを確認する方法も制度化している。それが開示の請求で、訂正や削除の申し入れを認めた。これらの個人情報の保護のために個人情報保護審議会(十人の委員)が設けられた。平成九年四月一日からは情報公開制度の導入に伴い、コンピュータの記録のみならず手処理に関するものまで広げ、名称を浜松市個人情報保護条例に改めた。平成十五年になって国が個人情報の保護に関する法律を整備したのに伴い、地方自治体にも新たな対応が求められたため、罰則の新設など、より一層の保護対策が盛られることになった。
表4-1 電子計算機による事務処理の概要と個人情報の記録項目(主なもののみ)
事務名 | 担当課 | 事務処理の概要 | 主な作成帳票 | 個人情報の記録項目 |
住民記録 | 市民課 | 住民基本台帳の作成 及び住民票の写し、 転出証明書の発行に 関すること | 住民票の写し 転出証明書 | ○氏名○住所○生年月日○性別○本籍 ○世帯主○続柄○筆頭者○異動事由○ 届出年月日○住民となった年月日○住所を 定めた年月日○年金取得の有無○年金の種 別○年金取得年月日○国保取得の有無○ 国保得喪年月日○国保証番号○児童手当支 給の有無○児童手当支給開始、終了年月日 ○選挙登録の有無○選挙投票区○選挙登録 年月日 |
固定資産税 (土地・家屋) | 資産税課 | 土地・家屋の評価、 税額の計算、税務統 計に関すること | 納税通知書 土地・家屋課 税台帳 名寄帳 | ○氏名○住所○台帳名義人○納税管理人 ○個人・法人の区分○共有持分○所在地番 ○地目○地積○評価額○課税標準額○ 家屋番号○用途○構造○床面積○建築 年次○年税額○期割額 |
国民健康保険 | 国民健康 保険課 | 加入者の資格異動、 保険料額の計算、高 額療養費の支給に関 すること | 決定通知書兼 納付通知書 被保険者証 | ○氏名○住所○生年月日○世帯主○被 保険者名○保険証番号○届出日○異動事 由○市民税額○資産税額○保険料額○ 被保険者数○給付費用○給付件数○医療 費○入院日数○外来日数○調剤費○高 額療養費 |
国民年金 | 年金課 | 加入者の資格異動、 保険料額の計算に関 すること | 納入通知書 国民年金(照 会)台帳 | ○氏名○住所○生年月日○性別○世帯 主○続柄○年金記号番号○厚生年金記号 番号○年金得喪記録○賦課金額○納付金 額○農業者年金加入期間○法定免除期間 ○申請免除期間○所得金額○控除金額○ 年税額○配偶者の有無○扶養人員○扶養 義務者個人番号○福祉年金記号番号 |