本格的な高齢社会が到来し、寝たきりや痴呆などで介護が必要な老人が増えてきたが、家族だけで介護を行うことは非常に難しくなった。このため、介護をする家族の精神的・肉体的な疲労やそれによる自殺や心中、虐待などの悲劇が起き、また、老老介譲や女性にそれが集中するなど様々な問題が起きてきた。また、これまでの高齢者介護は老人医療と老人福祉の二つの分野に分かれていたため、利用の手続きや費用負担の面で不均衡となっていた。こうしたことから国は平成九年十二月に介護保険法を制定、介護は家族だけでなく社会全体で支え、保健・医療・福祉にわたる総合的な介護サービスが受けられるような仕組みをつくった。この介護保険法の第三条には「市町村及び特別区は、この法律の定めるところにより、介護保険を行うものとする。」とあり、浜松市が保険者となって運営していくことになった。市は平成十年四月一日に介護保険準備室を新設、介護保険の解説パンフレットを発行したり、保険料の設定などの準備を始めた。被保険者は六十五歳以上の人(第一号被保険者)と四十歳以上六十五歳未満の医療保険に加入している人(第二号被保険者)で、保険料は第一号被保険者は所得に応じて、第二号被保険者は加入している医療保険の算定方法に基づいて設定されることになった。介護サービスには在宅と施設のサービスがあり、その介護サービスを利用するには本人または家族が市に申請することになっていた。申請からサービスを受けるまでは図4―5のような順序で行われた。四十歳以上を保険者としたのは、この年齢を過ぎると初老期痴呆や脳卒中などの老化に伴う病気が発生する可能性が高くなるためである。浜松市では平成十一年十月から要介護の認定の申請受付を開始し、三十日以内に認定結果の通知をするように決められていた。そして、同十二年四月一日から介護保険制度が開始された。
図4-5 介護サービス利用の流れ
平成十二年度末における被保険者数、要介護認定申請件数、介護保険認定者数(実人数)は表4―3の通りであった。また、平成十四年十月に利用された件数で多かったものは表4―4の通りであった。この後、介護保険は要支援が二段階となったり、保険料、申請、サービス面などで大きく変わっていった。
表4-3 平成12年度の介護保険の被保険者数、要介護認定申請件数、介護保険認定者数
被保険者数
汪:第1号被保険者は65歳以上の人、第2号被保険者は40歳以上
64歳以下で医療保険に加入している人が対象。
要介護認定申請件数
介護保険認定者数(実人数)
出典:『市政の概要』平成13年度版より作成
区分 | 第1号被保険者数 | 第2号被保険者数 | 合計 |
平成12年度末 | 94,506人 | 196,657人 | 291,163人 |
64歳以下で医療保険に加入している人が対象。
要介護認定申請件数
区分 | 新規申請 | 更新申請 | 区分変更申請 | 合計 |
平成12年度 | 4,139件 22.4% | 13,992件 75.8% | 338件 1.8% | 18,469件 100% |
介護保険認定者数(実人数)
介護度 | 要支援 | 要介護1 | 要介護2 | 要介護3 | 要介護4 | 要介護5 | 合計 |
平成12年度 | 927人 9.4% | 2,599人 26.3% | 2,037人 20.6% | 1,429人 14.4% | 1,392人 14.1% | 1,499人 15.2% | 9,883人 100% |
表4-4 よく利用された介護サービスベスト6
1 | 通所介護(デイサービス) (3,053件) 福祉施設などでの食事・入浴・機能訓練。 |
2 | 福祉用具の貸与 (2,522件) 車イスやベットなどの貸与。 |
3 | 訪問介護(ホームヘルプサービス) (2,206件) ヘルパーが食事・入浴・外出の介助や家事などを手伝う。 |
4 | 通所リハビリテーション(デイケア) (2,009件) 医療施設などでのリハビリ。 |
5 | 訪問看護 (1,091件) 看護師や保健師が家庭を訪問し、床ずれの処置や点滴などの管理を行う。 |
6 | 短期入所(ショートステイ) (1,073件) 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などへの短期間入所。 |
注:かっこ内は、平成14年10月に利用された件数。