環境問題は従来の局所的な産業公害や特定の自然環境の破壊などといったものから、都市型・生活型公害の深刻化、広範囲にわたる大気汚染など地球環境の劣悪化が予測されるようになった。平成四年の地球サミットでは地球環境保全が叫ばれたことにより、国はこれまでの環境行政を根本的に改めることになった。その基本姿勢は環境への負荷の少ない持続的な発展の可能な社会の構築と国際協調による地球環境の保全を積極的に進めようとするものであった。これに基づいてこれまでの公害対策基本法を廃止し、地球環境保全を目指す環境基本法が平成五年十一月十九日に公布・施行された。また、同法に基づき、環境保全施策の総合的・計画的な推進を図るために平成六年十二月の閣議で環境基本計画が策定された。この計画の基本方針では、①環境への負荷が少ない循環を基調とする経済社会システムの実現 ②自然と人間との共生の確保など四つの長期的目標を定めた。
【環境基本計画】
環境保全が強調されてきた中、平成六年九月二十九日の浜松市議会で栗原市長は環境基本計画について「国の計画を基本として、市の地域特性を考慮した基本計画が必要」と述べ、また、自然環境保全地域の指定については「自然環境保全地域としての定義付け、市内における対象物件、地域などの実態をまず把握しなければならない」とし、自然環境保全地域の指定に前向きな姿勢を示した。このような折、静岡県は平成八年三月に静岡県環境基本条例を制定、その中で県民には①生活排水をきれいに、②ごみを少なく ③省資源・省エネルギーの実行、④分別・リサイクルへの協力などを、事業者には①公害の防止、自然環境の保全、②適正に廃棄処理ができる製品等の開発、③再生資源など、環境への影響の少ない原材料の使用などを守るように求めた。そして平成九年三月に二十一世紀初頭を展望した静岡県環境基本計画を策定した。
【浜松市環境基本条例】
浜松市は国や県の方針を踏まえ、豊かで美しい環境を次世代に引き継いでいくために浜松市環境基本条例を平成十年九月三十日に制定、同十一年一月一日に施行した。この条例で市民の責務として①マイカー、エアコンなどの適正使用による大気汚染の防止、②きれいな生活排水と雨水の有効利用などによる水質汚濁防止、③リサイクル、環境美化、緑化活動への参加などを、事業者の責務としては県とほぼ同じだが、それに加え、事業所や事務所周辺の緑化活動や環境美化に努めることを求めた。また、市の責務として、自然条件や社会的条件を総合的に考えた施策を策定し、計画的に実施していくこととした。これを受けて多くの市民、環境審議会の委員、専門家の意見を聞いて浜松市環境基本計画を平成十一年三月に策定した。この計画の中で、浜松全市の望ましい環境像を「くらしが奏でる人と自然の交響曲(シンフォニー)」とし、市・市民・事業者が連携し、「都市」「自然」「産業」「文化」のそれぞれの要素が響きあう最高の音楽を奏でようと呼び掛けた。計画では市全体を対象としたが、市域を中央・北東部・南東部・南西部・西部・北部の六つの地域に区分し、地域別の目標も設定して施策の推進を図った。