平成になると、外国と比べると良好とされた日本の治安が憂慮すべき状況になった。平成五年(一九九三)には全国の刑法犯認知件数(警察で被害を認知した件数)が戦後最高を記録したが、特に乗物盗など地域住民にとって身近な犯罪が目立った。その背景として、日本の治安水準を高度に保ってきた地域社会の自治的な防犯機能が、地域住民の連帯意識の希薄化等により弱体化したことなどが考えられた(『静岡県警察史』自昭和五十年至平成十二年)。刑法犯とは具体的に言うと、凶悪犯(殺人・強盗・放火・強姦)、粗暴犯(暴行・傷害・脅迫・恐喝等)、窃盗犯(空き巣や車上狙いなどの窃盗)、知能犯(詐欺・横領・偽造等)、風俗犯(賭博・わいせつ)などである(平成六年『浜松地区警察白書』)。
　浜松地区(浜松市、浜名郡可美村・雄踏町、浜北市を含む)の刑法犯認知件数の推移を見ると(表4―5)、昭和五十年～同六十三年までは年間大体四千三百件～五千五百件前後で推移していた。平成三年には約七千四百件、同五年には約九千八百件、そして同六年と七年は一万件の大台を超え、その後少し減少したが、同十三年からは再び一万件を超え、同十五年には過去最高の一万二千九百八十二件となった。
　浜松地区のどこで犯罪が多いかを、昭和五十一年と平成四年の浜松中央署・同東署・浜北署の派出所・駐在所の件数順に示したのが表4―6である。十六年の開きはあるが大体同じ様な傾向である。表4―7は、同じ年次の刑法犯の概況を示したものである。総数は四千六百七十八件から八千七百九十四件と約一・九倍となった。この刑法犯のうち、窃盗は昭和五十一年が八十六％、平成四年は九十一％を占めていた。窃盗の内訳を示したのが表4―8である。昭和五十一年に最も多かった空き巣狙いは平成四年には約半分に減り、家庭での防犯対策の効果が見られた。その反面、オートバイ盗は五・三倍、自転車盗は四・九倍、車上狙いは二・九倍と大幅に増加してきた。
　
表4－5　浜松地区の刑法犯認知件数

　
表4－6　派出所・駐在所別の犯罪認知件数(上位10派出所)

　
表4－7　浜松地区における刑法犯の概況

　
表4－8　浜松地区の罪種別窃盗犯の発生状況