民事介入暴力とは民事取引や民事事件に暴力団が介入し、暴力的な手段によって不正不当な利益を上げる行為を指す。昭和四十一年(一九六六)頃の暴力団は用心棒、白タク営業、花札賭博、ノミ行為、暴力、脅しなどの犯罪を重ねて巨利を得ていた。しかし、その後の社会構造の変化に伴い暴力団は組織を改編し、同五十四年頃には暴行・傷害といった粗暴な犯罪は影をひそめ、法外な金利を取る悪質金融、手の込んだ債権・債務に係る恐喝、手形に絡む詐欺、覚せい剤密売等の犯罪に変わってきた。さらに親子の争いや人妻の浮気等家庭内の問題にも暴力団は介入するようになってきた(『暴力を見たら受けたらすぐ110番』昭和五十四年)。
【民事介入暴力 企業対象暴力】
平成二年(一九九〇)頃の全国の暴力団の資金源の内訳を見ると、年間収入一兆三千十九億円(このうち非合法が一兆四百五十三億円)のうち、覚せい剤が約三十五%を占めて第一位、以下、賭博、ノミ行為の約十七%、みかじめ料の約九%、次いで民事介入暴力が約七%、企業対象暴力が約三%を占めていた。この民事介入暴力と企業対象暴力を警察は新しい形態の資金源とみなし、暴力団は企業活動や市民の身近な経済行為などの民事の分野に権利行使を装って介入し、不当な利益をむさぼっていると市民に警告していた(『あらゆる暴力を追放して明るく住みよい町づくり』平成三年版)。
平成十一年(一九九九)暴力団による競売入札妨害が静岡県内で増加の兆しを見せた。県警の摘発件数は同年半年弱で三件九人で、前年一年分と並んだ。背景は不況による倒産や破産の増加があり、県警は今後も競売入札妨害が暴力団の重要な資金源活動になる恐れがあると見ていた。元来警察は、民事不介入の原則から競売入札妨害の事件化に慎重であったが、バブル崩壊に伴う金融債権問題の深刻化に伴い、数年前からは暴力団絡みの悪質なケースには厳しく摘発するように捜査体制を強化した。平成十一年一月に逮捕されたのは、うその譲渡債権等を主張して競売入札を妨害した市内山口組系芳菱会鍛冶町一家組長ら三人であった。暴力団側も不動産取り引きの知識に習熟し手口も複雑巧妙化しているので、県警は内偵捜査を強化し、事件の掘り起こしに全力を挙げる方針を示した(『静岡新聞』平成十一年六月十二日付)。