【東海地震 地震防災対策強化地域】
昭和五十一年(一九七六)東海地震説が発表され、震源域が特定されたが、その後の研究により、震源域は西側にずれると推定された。平成十三年(二〇〇一)十二月政府の中央防災会議の東海地震専門調査会は、東海地震の予測震度分布を二十二年ぶりに見直した。新たに地震防災対策強化地域の指定の目安となる震度六以上の地域の五十二市町村名を公表した。愛知県は名古屋市、豊橋市など四十四市町村、長野県は諏訪市など五市町村、山梨県は須玉町など三町であった。注目された県内の震度七の分布は、県が同年五月に発表した第三次被害想定とほぼ同じで、県西部では浜名湖沿岸や佐鳴湖に続く新川流域が震度七とされた(『静岡新聞』平成十三年十二月八日・十二日付)。
【『浜松市地域防災計画』】
これらを踏まえて平成十四年三月、浜松市は『浜松市地域防災計画』一般対策編、東海地震等対策編(同資料編)を作成した。この地震における危険度の試算は、御前崎沖から駿河湾に至る駿河トラフ(駿河湾で深さが六千メートルより浅く細長い海底盆地のことを言う)から西方の領域を震源域に、マグニチュード八程度の地震が発生した場合を想定して、県が行ったものである。地震動〔地震によって生じるある地上のゆれ(振動)を言う〕、液状化、人工造成地、津波、山・崖崩れおよび延焼火災に起因する建物災害とともに、ブロック塀、石塀および屋外落下物等の物的被害や人的被害を試算したものである。また、イ.地震予知がなく、突然地震が発生した場合と、ロ.警戒宣言が発せられた後、地震が発生した場合に分けて試算を出している。さらに各被害要因別に、早朝五時(冬)、正午(春・秋)、夕方六時(冬)の三つに区分した試算をしている。イの物的被害(建物)を見ると、冬の早朝五時発生だと建物被害率約十六%(建物棟数約二十万棟)、同り災率四十三%となる。同じ条件で人的被害を見ると、人口五十六万千人余に対し死傷者は一万三千六百人余(うち死者四百九十六人)である。この危険度の試算は、今後適切かつ効果的な地震対策の推進、さらに市民の防災への自助努力を積み重ねることによって、大幅に減少させることが出来ると考えられると結んでいる。
【地域防災計画の改正】
平成十六年二月、浜松市は東海地震の新しい情報体系に対応した市の地域防災計画を改正した。それは東海地震の切迫度を知らせるために新設された東海地震注意情報や東海地震予知情報に対応するように大幅に変更された。その一つは注意情報発表時の項目を新設したことで、注意情報が発表されたときは、必要な職員を参集して防災体制を確保し、注意情報発表時の応急対策を的確に実施するとともに、必要に応じて浜松市地震災害警戒本部を迅速に開設できるように準備すると規定した。また、その前段階の東海地震観測情報の発表段階では必要な職員を参集し、情報収集・伝達および連絡体制を確保するとした。このように注意情報段階から防災体制を確保するなど一段早い体制整備を狙ったものであった(『静岡新聞』平成十六年二月五日付)。