【耐震化事業】
浜松市は平成十四年(二〇〇二)度から緊急耐震化事業を進めた。これは阪神・淡路大震災(平成七年)から公共建築物の耐震化の重要性が叫ばれ、東海地震の切迫性も言われ出してきたからであった。その年度はまず百六十四施設の耐震診断を行い、その中から大地震の際に大きな被害を受ける危険性のある建物を選んだ。補強工事は、市民の第一次避難先となる小・中学校体育館から始め、同十五年十五校、翌十六年二十八校の四十三校の耐震化を進めた。具体的には体育館の壁を増やしたり、筋交いを入れたり、屋根を補強した。工事は、生徒の学校生活に支障が少ないよう、夏休みと冬休みに集中して行った。平成十五年度に耐震補強工事が行われた小学校十五校の体育館は昭和五十六年六月の耐震基準改正の前に建築された建物であった(『静岡新聞』平成十五年五月十六日付)。
平成十五年八月四日、文部科学省は全国の公立小・中学校の校舎・体育館十三万千四百八十二棟のうち、耐震性に問題がないことがはっきりしているのは四十六・六%に過ぎないとの調査結果を公表した(同年四月一日の調査)。診断率を都道府県別で見ると、静岡県は八十五・九%で全国第二位、トップは神奈川県の八十七・一%、耐震化率でも神奈川県の七十三・三%に次いで第二位の七十二・二%であった(『静岡新聞』平成十五年八月四日付)。静岡県は東海地震の強化地域に指定されていたので対策を早くから講じていたからである。
平成十六年二月、総務省消防庁は東海地震など大規模地震発生に備え、庁舎や避難所・診療施設など、県や市町村の防災拠点となる公共施設の耐震化実態調査結果をまとめた。それによると、都道府県別で静岡県は全国トップ八十・八%であった(平成十九年度末までの達成が見込まれる耐震化率)。二位は東京で七十六・九%、最下位の長崎は三十五・七%で自治体の取り組みに格差が目立った(『静岡新聞』平成十六年二月二十八日付)。全国的に見れば県や浜松市の公共施設の建物の耐震化は進んでいたが、この後も工事は続いていった。