科学技術の急激な進展と社会の要請に応えるべく静岡大学は平成二年に静岡大学将来構想委員会を設置し、翌年にその第一次答申をまとめた。浜松に関係するものとしては、学部再編と工業短期大学部の廃止、浜松キャンパスでの学部四年一貫教育態勢の構築、浜松キャンパスに人間情報科学部新設の三つであった。工業短大は高学歴社会の到来や高度技術者の必要性が増したことから定員割れが生じ、その役割は終わったとの認識から、廃止する方向で検討された。その結果、新たに工学部の改組と合わせて夜間に四年間学ぶという夜間主コースとして生まれ変わることとなった。定員は短大当時から見ると大幅に減ったが、工学部の新たに設置された五つの学科(以前は十学科)の夜間主コースとして再編された。こうして工業短期大学部は平成七年三月で廃止となり、同九年三月に閉学式が行われた。表4―13は平成六年十月に改組された工学部の学科と定員を表したもので、翌年四月から学生を受け入れていった。
表4-13 夜間主コース設置に伴う工学部の入学定員
改組前 | 改組後 | ||||||||||
区分 | 学科名 | 入学 定員 | 臨時 増募 | 計 | 収容 定員 | 区分 | 学科名 | 入学 定員 | 計 | 臨時 増募 | 完成 収容 人員 |
工 学 部 | 機械工学科 エネルギー機械工学科 精密工学科 光電機械工学科 電気工学科 電子工学科 情報知識工学科 応用科学科 材料精密化学科 化学工学科 | 40 40 40 40 60 60 40 45 50 40 | 5 2 5 5 6 5 5 5 3 5 | 45 42 45 45 66 65 45 50 53 45 | 180 168 180 180 264 260 180 200 212 180 | 工 学 部 | 機械工学科 昼間コース 夜間主コース | 150 20 | 170 | 12 | 648 80 |
電気・電子工学科 昼間コース 夜間主コース | 150 20 | 170 | 11 | 644 80 | |||||||
知能情報工学科 昼間コース 夜間主コース | 100 20 | 120 | 10 | 440 80 | |||||||
物質工学科 昼間コース 夜間主コース | 145 10 | 155 | 13 | 632 40 | |||||||
計(10学科) | 455 | 46 | 501 | 2004 | |||||||
工 業 短 期 大 学 部 | 機械工学科 電気工学科 電子工学科 情報工学科 工業化学科 | 80 40 40 40 40 | 80 40 40 40 40 | 240 120 120 120 120 | |||||||
システム工学科 昼間コース | 80 | 80 | 320 | ||||||||
昼間コース 計 夜間主コース | 625 70 | 695 | 46 | 2684 280 | |||||||
計(5学科) | 240 | 240 | 720 | ||||||||
合計 | 695 | 46 | 741 | 2724 | 合計(5学科) | 695 | 695 | 46 | 2964 |
【情報学部】
平成の時代に入り浜松市や静岡県では高度情報化社会への対応が進み、これらに従事する有能な人材の確保が課題となっていた。これを受けて静岡大学情報学部が浜松キャンパスに設置されることになり、平成七年十月に設置、同八年四月から情報科学科(入学定員百名)と情報社会学科(入学定員百名)でスタートした。この情報学部は理系と文系の学際的な教育を主眼とするもので、国公立大学では初めてのものであった。情報学部の新校舎は平成九年三月に完成、四月からここでの授業が始まった。
【一貫教育】
これまで浜松の工学部に入学した学生は一年次と二年次は静岡で教養課程を受けていた。また、専門課程は浜松から教官が静岡に出向いて授業をしたり、平成七年からはパソコン通信を使用して遠隔講義を始めた。平成七年に教養部が廃止となり、浜松での四年間の一貫教育は現実のものとなってきた。こうしてこれまで静岡で学んでいた工学部の一・二年生と情報学部の一年生は浜松で一貫教育を行うこととなり、平成十二年四月から実施された。これにより約八百人の学生が浜松に来ることとなった。これまで広大な浜松キャンパスには工学部と情報学部があったが、学生の姿があまり見られず大学のある街として何か物足りない面が多々見られた。一貫教育開始とともに大学周辺にはワンルームマンションの建築が進み、同年四月には静岡文化芸術大学の開学とも重なり、徐々に学生が増え、街に活気が出てくるようになった。
静岡大学の社会的貢献の一つとして地域共同研究センターが工学部内に設置されたのは平成三年四月、これが地域の企業などの支援もあって浜松地域テクノポリスの都田地区に移転、開所式を迎えたのは平成五年十月であった。ここでは民間企業との共同研究や技術相談、先端技術セミナーの開催など、地元産業界の期待に応える様々な研究・開発などが行われている。