開かれた大学

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 これまで大学、特に国立大学はいわゆる〝象牙の塔〟と揶揄(やゆ)され、高度で難解な学問探究の場として一般の人々には立ち寄り難い一面を持っていた。情報化社会の進展や少子化、また、多くの大学が設立され、大学間の競争が激しくなるとこのような状態から脱却し、公開講座や出前講座、大学図書館の公開、講演会の講師を務める教官の紹介など、広く社会に開かれた大学を目指すようになった。
 
【公開講座】
 浜松短期大学では昭和五十三年から公開講座、夏季大学を開設、平成十一年には資格取得講座を、さらに平成十三年には浜松地域総合研究所を設立して講演会や研究会などを開き、研究の成果を市民に伝えている。静岡大学工学部で公開講座を始めたのは昭和五十四年、工学部の名前のとおり、先端科学入門や環境問題などの問題に切り込んだ。先述のように地域共同研究センターの設立、産学協同研究、さらに、世界各国からの留学生の受け入れが本格化し、平成五年には浜松国際交流会館を設置した。浜松キャンパスにある静岡大学附属図書館浜松分館では市民への開放が進み、平成十四年十月から平日はもとより土・日・祝日も開館(午後七時まで)することとなり、翌十五年四月からは市民への館外貸出サービスを始めている。浜松医科大学でも昭和五十四年から医学や食生活についての公開講座を開き、毎年二百人前後の参加者を数えている。留学生の受け入れも進み、平成八年には国際交流会館を開館した。常葉学園浜松大学では平成元年からくらしに役立つ情報をテーマに公開講座を開始、平成八年の大学院経営学研究科の開設に当たっては地元の社会人にも門戸を開放するなど、地元とのつながりを深めた。聖隷クリストファー看護大学でも平成五年から健康や病気をテーマに公開講座を開いている。このように各大学は市民に向けて様々な講座を開くようになり、誰もが大学の先生の講義を聴くことが出来る時代となった。昭和六十二年には静岡県立大学で『研究者プロフィール』、平成四年には静岡大学で『静岡大学教官総覧』の冊子が刊行された。これには大学の先生の担当授業科目、研究歴や専門分野などが掲載され、大学の持つ知的、人的財産を地域に提供する一つの資料として出されたのであった。市民はこれにより講演会の講師依頼や調査・研究の相談などが出来るようになった。多くの大学では研究の成果を紀要または研究論集という冊子にまとめている。これらは図書館などで閲覧できるようになっている。