【消費税引き上げ】
平成四年からの大規模な財政出動は、他方で巨大な財政赤字を累積していった。そこで、同六年、政府は税制改革を目指し、同九年四月から消費税率を二ポイント上げ、五%に引き上げることにした。消費税率の引き上げは、景気が回復したという理由で、予定通り同九年四月一日から導入された。しかし、消費税引き上げ直前に駆け込み需要があったものの、四月からはその反動もあり消費は大幅に落ち込んでいった。さらに、特別減税(十五%の定率減税)の打ち切り、社会保険料の引き上げ、医療費の患者負担の引き上げなどが行われたため、同九年の個人消費は落ち込み、景気回復の芽を摘み取ってしまう結果となった。
静岡県においても消費税の引き上げにより、四月の消費は対前年比で大幅に減少した。静岡県百貨店協会の調べによると(『静岡新聞』平成九年五月十五日付)、県内七百貨店の総売上高は対前年同月比で十四・六%減少、食料品、身の回り品を除く全ての商品は二桁台の減少となった。中でも、宝飾品や化粧品を含む雑貨や家具、家電などの比較的高額商品の落ち込みは大きく、二十~三十%の減少になった。当初、駆け込み需要に対する反動によって一時的に消費が減少すると考えられていたが、消費マインドの回復の足取りは重く、景気の先行きに不透明感を与えた。消費税引き上げの半年後においても消費は回復せず、百貨店の売り上げは対前年割れを起こした。
消費税の引き上げによる消費の落ち込みは、食品や身の回り品など、毎日購入する商品にも五%の消費税がかかるため、積み重なることによって家計に大きな負担をかけることになった。コープしずおか家計簿グループの一主婦の家庭での支出を見ると、夫婦と子供二人の平均的な家庭で一カ月平均の消費税額は一万七千百四十三円となり、前年(消費税引き上げ前)の一・八倍になったとのことである(『静岡新聞』平成九年十月一日付)。消費税の引き上げは、①十分に景気が回復しない段階で導入されたこと、②逆進的性格を持つ増税であったことなどにより、平成不況の性格をデフレ不況といったものに変質させていった。